[ EP: 科学に佇む心と身体 ]

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体外受精は受精卵一つでも、実は多胎になりやすい

カテゴリ[科学に佇む2008年] 2008/04/13
2008/04 朝日新聞 受精卵「原則一つ」 体外受精で産科婦人科学会が指針
 http://news.goo.ne.jp/article/asahi/life/K2008041202130.html
2008/04 時事通信 体外受精卵は1個、正式決定=多胎防止で産科婦人科学会
 http://news.goo.ne.jp/article/jiji/life/jiji-080412X295.html
2008/04 共同通信 移植する受精卵は原則1個 産婦人科学会が倫理指針
 http://news.goo.ne.jp/article/kyodo/life/CO2008041201000610.html


 ここで言う「多胎(たたい)」というのは、双子、三つ子、四つ子、五つ子・・・などの、一度に二人以上妊娠出産してしまう事例のことを言います。
 よく考えたら、双子、三つ子、四つ子、五つ子・・・をひっくるめて言い表せる便利な単語は、この「多胎」くらいしかないのかな。(**腹などという、むかし使われていた差別語は、ちょっと今は使えないよね)

 で、今回の報道は、不妊治療をするとき、体外で受精させた卵子を「いくつ」子宮に戻すのか、という問題に、産科婦人科学会が「一回に一個でじゅうぶんだ」という指針を、やっと、出した。というもの。

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●右画
●お腹にたくさん赤ちゃんを入れてしまう

 これまでの不妊治療では、お母さんのおなかの中に、いっぺんに複数の受精卵を入れることがあたりまえに行われていたんですよ。
 なんでかというと、
・不妊治療はつらく苦しいし、経済的負担もたいへん重い。
・数打ちゃ当たる、たくさん入れればどれか成功するだろう。
少しでも妊娠成功の確率を上げたい、それがために一度にたくさんの子種をお腹の中に入れてしまう。

 いっぺんに複数の子種(こだね/胚/受精卵)をお腹に戻してしまうと、それはもう、多胎妊娠が発生しないほうがおかしいのであって、体外受精による多胎妊娠が頻発してしまっていた。


2000/05 毎日新聞 受精卵移植、女性の4割「4個以上」
 学会ルールに違反 不妊の1400人対象

体外受精は増加、多胎は減少@ヨーロッパ
2001/07 E.S.H.R.E.  Doctors perform more IVF treatments, but multiple births decline
2001/07 BBC News  IVF twin threat questioned
出生全体から言えば、人工生殖が増えているせいでで双子や多胎は増加しています
2001/07 BBC News  Number of twins on increase
2001/07 AlphaGalileo.Org  We are facing an epidemic of multiple births

2004/03 【日本語記事】 UK Today (JAPAN JOURNALS) 
 多胎児出産率が10年間で2割増加 不妊治療のせい イギリス


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●排卵促進剤でも多胎が起きる

 不妊治療で多胎が起きる原因は、体外受精でお腹にたくさん受精卵を入れてしまうせいだけではない。
 「排卵促進剤(卵子をたくさん出させる薬)」を使った結果、いっぺんにたくさん卵子が排卵されてしまって、そこから多胎になってしまう例も少なくない。

七つ子騒ぎ、できちゃったもん 排卵促進剤によるあとの祭り
2001/07 Washington Post Second-Guessing the Seven Births
7つ子は多すぎる! 多胎の制限に向けて
2001/07 Boston Globe  In stir over septuplets, a move to limit multiple births
2001/08 The Times IVF clinics told to avoid triplets
2001/08 BBC News  Action to cut IVF multiple births


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●なんで多胎がいけないの?

 ふつうは、ヒトの子宮は、一度に一人だけ妊娠する状態に適した作りになっている。
 二人以上妊娠してしまうと、一応機能は果たすけれど、そのうちパッツンパッツンになってしまって、
・流産して死んでしまう
・未熟児で成長が悪くなる
・障害を抱える率が高くなる
・死産する恐れもある
・経済的に養育費でお手上げになる
まして、出産の際にお母さんの命までをも危うくすることになりかねない。

... 以下「受精卵一個でも多胎になる」?...

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双子って産むのは大変ですか
 生殖医療の進展で多胎妊娠例が増えている
 多胎妊娠がはらむリスクはどのくらい
2005/06 EurekAlert How risky are twin pregnancies?

体外受精による多胎、多大なトラブルをもたらしがち
2003/10 BBC News  IVF multiples 'strain marriages'

多胎出産はものすごい出費
 三つ子は三人の子より8倍もコストがかかります
 双子は二人兄弟の3倍だし
2005/06 EurekAlert  Revealed: The true cost to the nation of multiple pregnancies

2006/02 毎日新聞 不妊治療:半数、病院を中途変更
 5年以上の継続者、40%が治療費300万円以上


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●右画
●産むか死なすか

 多胎になってしまったと判明した場合、子どもが欲しくて欲しくて今までがんばってきた父さん母さんは、命が危ないからといって、お腹の中の子、どれかを堕ろそうなんて言われても、これはそーとー無理な話になる。
 「おめでとうございます! 何年も頑張ったかいがありましたね! みごとに4つ子を妊娠なさっていますよ。 でも四つ子では出産に無理があるので、お腹の中のどの子を殺しますか?」
   crazy

 この業界では、多すぎるお腹の子を殺して減らすことは、「中絶」とは言わずに「減数手術」とおっしゃっているらしい。

2000/03 毎日新聞 減数手術を容認 3胎以上の妊娠に限定
 日本母性保護産婦人科医会が最終提言

お腹の中の子を殺して減らします
2005/04 【読売新聞 多胎妊娠の減数手術…三つ子で4割、四つ子は7割
 不妊治療で妊娠した複数の胎児を人工的に減らす「減数手術」
2005/04 共同通信 3胎妊娠の4割で減数手術 体外受精で会告違反も


 妊娠できた子を全部産みたい。
 でも全部産もうとしたら、流産や死産になりかねない。
 でもどの子も殺せない。

多胎は嬉しい出来事よ チャンスには換えられない
2004/01 BBC News  'We're glad we had triplets after IVF'

2005/02 【日本語記事】 UK Today (JAPAN JOURNALS) 
 リスクもアップ! 不妊治療を希望するカップル、双子を求めるケースが増加 イギリス


 そんな「究極の選択」的悲劇をなくすために、このたび日本の産科婦人科学会は、ようやく「体外受精で一度に入れる胚は一個にしてね」と指針を発表なさった。

多胎例削減へ
2004/01 BBC News  Moves to cut multiple IVF births


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●生殖科学はどんどん進む

 一度に一個で大丈夫なの?
 また妊娠に失敗するんじゃないの? 徒労はごめんだよ!
 たくさん受精卵を入れたほうが、妊娠率は高いんでしょ?

 そんなとまどいも多く見られたのだけれど、最近の人工生殖技術の進展はめざましく、かなり「一個でOK」という水準に近づいているとのこと。

体外受精、多胎妊娠させなくても、胚一個だけで受胎率充分
2003/06 EurekAlert  Success and single embryo transfer in IVF

多胎が及ぼす胎児へのリスク 人工授精の際、受胎は胚一個で充分
2002/07 BBC News Extra embryo 'risks baby health'
2002/07 EurekAlert! Fertility treatments increase incidence of twins at a cost

多胎対策 胚の移植は一個で十分
2004/06 BBC News  IVF 'should use one embryo'
2004/06 EurekAlert  Single embryo transfer - a new understanding of factors for success

体外受精に胚一個でじゅうぶんになる新技術
2004/10 news@nature.com  Big success for single embryos in IVF
2004/12 EurekAlert  Good results with only one egg in in-vitro fertilization

母体に入れる体外受精胚は一個でじゅうぶん
 普通妊娠に負けない元気な子が産まれます
2005/06 New Scientist  Implanting single IVF embryos may be best

2006/06 共同通信 受精卵1個でも妊娠率良好 30代後半の体外受精調査
2006/06 BBC News  Single IVF embryo 'just as good'
2006/06 毎日新聞 体外受精:受精卵が1個でも、複数と同等に妊娠


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●日本の動き

 で、これらの海外での動きもあり、日本でも2006年くらいから(遅っ!)指針作りの報が聞こえ始める。
 (日本語の報道記事は、たいがい元ページがすぐ消えてしまうのでリンクはつけていません。記事の内容が必要な場合は、記事のタイトルでウェブを検索すると、だれかさんによる無断コピーが拾えることがあります。)

体外受精 移植胚数を制限すれば、多胎を防げる
2006/10 EurekAlert New fertility guidelines limit embryo transfers
2006/10 【日本語記事】読売新聞 体外受精 移植胚の数制限
 米生殖医学会 患者の年齢や状況に応じて1〜5個に
2006/10 【日本語記事】読売新聞 受精卵の移植、35歳以下1個
多胎防止へ学会が年齢別制限

2007/03 読売新聞 多胎妊娠防止へ学会指針、35歳未満は初回移植1個
2007/03 毎日新聞 不妊治療:受精卵移植数を制限 生殖医学会が多胎妊娠防止で
2007/03 共同通信 母体に戻す受精卵、数を制限 双子以上の妊娠を防止
2007/03 読売新聞 体外受精 多胎妊娠防止へ学会指針
 受精卵数 40歳未満は2個以下

2007/06 毎日新聞 体外受精:多胎妊娠防止策、受精卵2個まで 日産婦が制限へ
2007/06 読売新聞 体外受精で子宮に戻す受精卵の上限、3個をさらに削減へ
2007/06 読売新聞 体外受精 子宮へ戻す卵子2個以下
 産婦人科学会方針 多胎妊娠を防止


●2007年前半

 このころはまだ「双子は容認する」方向だったのかな。
 その間にもどんどん技術は向上するわけで、あっというまに「胚2個に減らしても、まだ多いんじゃないか」という向きになってくる。

●右画
2007/08 毎日新聞 卵子:若返り、新技術 提供1個、受精率向上−−北九州の医院

2007/10 EurekAlert IVF technique enables pregnancy without multiple births, Stanford researchers find
高齢でも多胎なしで、妊娠を可能にする体外受精技術

2007/12 BBC News Fresh drive to cut IVF twin toll
体外受精による多胎を減らせ

2008/02 EurekAlert Significantly higher success rates with artificial insemination
人工授精により高い成功率
 特別顕微鏡を使用して『良い』卵子が区別できる

『双子の出産を減らす』体外受精技術
2008/02 BBC News IVF technique 'cuts twin births'
 5日目の胞胚を植え付ける
 より良く熟した受精卵を一個だけ使用するならば、多胎を劇的に減らすことができる


●2007年後半

 このころから、「これはもう、一個でいいんでないかい」となってきた。

2007/12 時事通信 移植受精卵「2個以内」に=治療成績向上、危険を回避−学会
2007/12 朝日新聞 戻す受精卵2個以下へ 日本産科婦人科学会
2007/12 読売新聞 子宮への受精卵の上限数は2個まで
学会指針 多胎妊娠防止が狙い

2008/02 朝日新聞 戻す受精卵、原則1つ 体外受精で日産婦が指針
2008/02 読売新聞 子宮に戻す受精卵 「原則1個」を承認
2008/02 毎日新聞 体外受精卵:原則1個 日産婦、子宮に戻す数改定案


 そして、今回4月中旬の、

2008/04 朝日新聞 受精卵「原則一つ」 体外受精で産科婦人科学会が指針
 http://news.goo.ne.jp/article/asahi/life/K2008041202130.html
2008/04 時事通信 体外受精卵は1個、正式決定=多胎防止で産科婦人科学会
 http://news.goo.ne.jp/article/jiji/life/jiji-080412X295.html
2008/04 共同通信 移植する受精卵は原則1個 産婦人科学会が倫理指針
 http://news.goo.ne.jp/article/kyodo/life/CO2008041201000610.html


に至るわけです。

 いろいろな過去記事を閲覧なさりたい方は、
 → 『 人工生殖技術 特集 』
の奥の過去記事庫をご覧下さい。

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アンカー【受精卵一個でも多胎になる?】


 さて。 まーそれだけでは、かなりフツーな話で面白味に欠けますね。

 ここは「妙な切り口」屋の雨崎らしく、こんな報も付け加えておきましょう。

●右画
うわー、人工生殖における多胎問題、移植胚を一個に限っても、一卵性双生児率が高めじゃん 〜日本
 なんか一卵性双生児になりやすくなる過程を与えてしまっているみたいだぞ
2007/07 BBC News IVF turns one embryo into twins
 現在、着床率を高めるために複数の胚を移植していることが原因で、体外受精による妊娠の4割(!)は双子(多胎妊娠)になってしまっている。
 多胎妊娠の多くは早産になってしまい、それが元で年間100人以上が命を落としている@英国
 なもんで、かねてより「移植胚は一個だけに」と進言されてきていたんだけども、それでも、一個だけでも、多胎になりやすいってか。


 体の外で受精させて戻す、その手続き自体が、多胎を引き起こす可能性。

 体外受精といえば、「自然にキメラ人間ができてしまう」という現象の話があったことも思い出しますねぇ。
 → 『 あなたは実は二人です:本人も知らないキメラ 』

 こんな数字もおいておきますね。

2005/01 毎日新聞 体外受精児: 10万人超す 02年は76人に1人
2005/01 産経新聞 体外受精児10万超す 助成自治体の増加影響
2005/01 共同通信 体外受精児10万人超える 02年は出生数の1・3%



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