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偏見が女を縛る:数学の才能は女にもたっぷり

カテゴリ[科学に佇む2008年] 2008/04/02
 元村有希子氏によれば、日本は先進国中、女性科学者・研究者の割合が最低レベルなんだそうな。

◆左表紙

 『科学者ってなんだ?』
 進藤典男, 菅裕明, 隅蔵康一, 白楽ロックビル, 平尾一郎, 村松秀, 元村有希子, 梶雅範 (編集)
 丸善 (2007/11/1) 

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 日本の女は理系ができない? 日本女性は科学から排除されている?

〓〓〓 EP 〓〓〓

 ということで、
 → 2004/06 『 数学の才能は女にもたっぷり 』 を加筆・再構成してここに置き直します。

アンカー【脳の違いのせいじゃない】


 「女は数学や理系の才能がない、向いていない」というのは迷信か否か。

理系、女は男に負けてません
2002/01 EurekAlert!  New study: Girls barely trail boys in mathematics
 平均して、中学に入るまでは女子のほうが算数の成績はよい。


 実際は、算数の能力は、男女で大きな違いはない。
 男より、女のほうがトクイとする「数扱い」もある。

... 以下、父親の偏見が子どもの成績を下げている...

〓〓〓 EP 〓〓〓

2003/09 【日本語記事】ネイチャーバイオニュース  男と女の計数法 少ない数を数えるのが上手なのはどっち?
女の勝ち
 1〜4個の点をぱっと把握するのは、女性の方が速いのだ。
2003/09 BBC News Women beat men in maths test


 「数」に限らず、「ぱっと察知する」のは女のほうが能力が高いという話はよくいわれている。
 → 『 脳の男女差、心の性差 』
 一言で「数学」や「算数」と言っても、それが指す対象や思考様式には、さまざまなものが含まれる。
 それぞれの計算の種類や数字の扱いによって、トクイ・ヘタがいろいろ違ってくるはず。

男女の認知機能の性差:初歩読本
2006/10  AlphaPsy Sex Differences in Cognition: a primer


 近頃は、それらの性差異の由来は、”ヒトの進化上、男女の役割の違いから生じてきた違いである”と解釈されやすい。と考えると、「数学」という技能は、ヒトの進化上、重要だったことはほとんどないんだよね。進化的に、数学や理系の才能で男女の間に重要な違いが生じたと持っていくのはちょっと無理目。
 敢えて解釈するならば、「男のほうが偏った脳になりやすい」という話になるだろうか。

複雑な計算に使うのは、脳のそれ専用部分だけ
 男の脳は、部分ごとに専門的な働きをする傾向がある
 女は、脳の一箇所だけでなく、広い範囲の脳を使う傾向がある
2002/07 DW-WORLD.DE Scanning the Brain for the Key to Intelligence


 職人、専門家、エキスパート。
 一転集中型の**屋さん(専門バカ)になりやすい男の脳と、オールマイティな能力を保持する女の脳、そういう流れで「数学の才能」の男女差が語られたりすることは、ある。
 例えば、図抜けた数学者は男ばかりだし()。天才呼ばわりされる者も男のほうが多い。
 逆に言えば(この逆のほうはあまり語られないのだが)、数学が全然ダメな人間も男のほうが多い、才能を発揮しない鈍才も、男のほうが多い。要するに、男のほうが、品質がバラバラで、最高品質も最低品質も多く発生する。

〓〓〓 EP 〓〓〓

●右画
偏りやすい男の脳と、なんでもできる女の脳。
そういう図式はありうるが、すべてがすべて、男にしろ女にしろ、そんな脳であると思ってもらったら困る。
男でも、オールマイティ型の脳の人はいるし、女でも、職人能力を発揮する理系脳の人間はいる。

→ 『 「脳の性差」という性差別に気をつけろ! 』


アンカー【数学は共感できない分野?】


 女は、男にひけを取らない理系の才能を持っている。
 だのに、元村有希子氏によれば、日本は先進国中、女性科学者・研究者の割合が最低レベルなんだそうな。
 日本は国民の才能を発揮させていない。あーらもったいない。

 では、なんで女の日本人科学者は少ないのだろう?
 何が女の才能をつぶしているのだろう?

女性の進路に、数学系(工学、物理、天文)が少ないのはなぜ
 カギは数学ではなく、それらの学問に価値を見いだせるか否か
 人間指向な学生(主に女性)は、理数系ではなく人間指向な分野:医学、環境科学、社会学を選ぶ
2003/05 EurekAlert U-M study helps define why fewer women choose math-based careers
 男は「仲良し」より「勝ち負け」にたかりやすい。人間関係を二の次にしたような「どうやって勝つか」「どうやって自分だけを押し上げるか」ゲームに拘泥する傾向が強い。
 それとは逆に、女性は「個人の業績」より仲間との関係、「社会的貢献」や「人間関係の向上」に向きがち。


●右画
 ひとつには、その分野が「人間相手」かどうか、によって差が出るのだとされることがある。
 「みんなとの人間関係を大切にする」女は、ヒト相手ではない理系より、人間相手の機微に重きを置く分野に惹かれやすい。
 「仲良くやることより自分の業績アップにこだわる」男は、ヒトづきあいが少なくてすむIT産業や数学、理系に進みやすい。
 → 『物理学者という人種』

 まあ、それも一つの要因にはなるだろう。
 (でも、現実には、人さばきが大変うまい幹事系の男もいれば、ヒッキーオタク系の女もけっこういるからね)

 女は「人間関係を大事にする」と思われている。
 → 『 共感する女脳、システム化する男脳 』
 共感をする能力というのは、つまり見たもの聞いたものの影響を受けやすい、ということだ。思いやりも発揮するし、気も効くし、人間関係も円滑に行くだろう。
 でも、逆に言えば、「よく共感ができる人」は、「暗示の影響を受けやすい」ということでもある。

 暗示。
 つまり、偏見の影響を受けやすい。

アンカー【偏見(先入観)が成績を下げる】


数学の試験、女は女だけで受験させると成績が良くなる。
 男性との混合で受験させると、男が多いほど女性の成績はかんばしくない結果になる。
 偏見が与える暗示効果のせいか
2000/09  Women Perform Better In Math When Tested Without Men  Brown University

「女は数学ができない/女は女らしいほうがいい」と思い込んでいる女ほど、数学がダメになる
2007/01 EurekAlert Implicit stereotypes and gender identification may affect female math performance
 暗黙のステレオタイプとジェンダー自認は、女性の数学能力に影響を及ぼすっぽい


 偏見で影響を受けるのは女だけではない。
 「差別と暗示」の研究で蓄積が厚いのは人種問題の分野だ。
 差別されている人種でも、似たような数学の成績への悪影響が発生する。
 例えば、白人との共学クラスでは黒人だけのクラスに比べて黒人学生の成績が低下してしまう。

●右画
アジア系の男性と白人男性を用意して、「アジア系の男のほうが数学が得意だ」という暗示をかけると、白人の男は数学ができなくなりますぞ
2006/10  Mixing Memory : Gender, Math, Stereotype Threat, and Testosterone
 男と女は違うけれど、それが数学の成績の差になるとは言えない
 女は「数学ができない」と思わされているので、暗示で成績が落ちている
 偏見の脅威とジェンダー、数学、テストステロン

自信しだい 数学が不安だと、成績もがた落ち
2007/02 Discovery Math Anxiety Drains Brain Power
 数学不安は、脳力を消耗させる

「年寄りだ」と言われる高齢者は成績が悪くなる
→ 2006/07【日本語ブログ】 『 自己成就効果という呪い 』  暗示で上下する知能指数


 差別される側。人種、高齢者、女・・・
 「不安」だけでも成績が落ちる。
 共感能力が高い(とされる)女では、暗示に弱い関係で、よけいにこの悪影響が出やすいだろうし。

学友の成績が悪いと、それに合わせてしまう女の子
2008/02 EurekAlert Friends' school achievement influences high school girls' interest in math
 仲間の学校成績は、女子高生の数学に対する意欲に影響する

運転が下手だと言われた女性は、よけい運転が下手になる
2008/03 ABC@オーストラリア Stereotype stuffs up women's driving
 ステレオタイプが女の走りをダメにする

偏見が引き起こした数学不安は、女子の数学以外の成績までむしばんでいく
2007/05 EurekAlert Stereotype-induced math anxiety undermines girls' ability to perform in other academic areas


 偏見が、思い込みが、女子の進路をダメにしていく。

おのれの知性を過大評価する男
2008/02 NewsWeek He's Not as Smart as He Thinks
 知性に対して性差はないが、女は自分を過小評価し、男はうぬぼれる

娘が数学苦手なのは父親のせいだったのか!?
2007/06 ScienceDaily How Dads Influence Their Daughters' Interest In Math
 親が「男はできて当然、女に数学は無理」と才能をくじいている
 特に父親が持つ偏見が強いほど、影響は甚大


 男の兄弟が数学の成績がいいのに、姉・妹は算数いまいちな場合、「お父さんがひどい偏見持ち」だからかもしれないわけだ。

〓〓〓 EP 〓〓〓

 ところで、あなたは、女は、数学も科学もできなくてもかまわないと思いますか?
 女の科学者は少なくてもかまわない?

アンカー【性差別が日本をダメにする?】


 さて、ここで冒頭のご本に戻ります。

◆左表紙

 『科学者ってなんだ?』
 進藤典男, 菅裕明, 隅蔵康一, 白楽ロックビル, 平尾一郎, 村松秀, 元村有希子, 梶雅範 (編集)
 丸善 (2007/11/1) 

 以下、当該書からの引用部分はすべて元村有希子氏の担当章より


『科学者ってなんだ?』 p.125
「先生は,私が理科でよい成績をとることを期待している」「私が科学技術に関する仕事についたら,父親(母親)は喜ぶだろう」と考えている中学2年生は,男子が女子を大きく上まわった. つまり女子は周囲から理科のいい成績を「期待されていない」と思っている.


 日本人は、女の才能を伸ばさない。積極的につぶしにかかる。
 女の才能をつぶすことに抵抗がない、先進国中トップレベルの偏見持ちの国なのだそうだ。

『科学者ってなんだ?』
p.127
国際比較を見てみよう. [〜中略〜] 
日本は先進各国で最下位クラス.グラフでは韓国と同率だが,韓国は政府主導で女性の登用を進めており,ごく最近,比率で日本を抜いたともいわれている.

p.128
 総務省の「科学技術研究調査」によると,2006年には約10.3万人の女性研究者の3分の1が企業,6割が大学に所属している.男性研究者はその逆で,3分の2が企業,3割が大学だ.


 民間企業からして、女という人材を活用する気がないらしい。それじゃ勝てないだろ。

『科学者ってなんだ?』 p.132
さらに政府は現実的な問題として,少子高齢社会による労働力減少が国際競争力の低下に直結すると危機感を募らせている.競争力を維持するためには,女性や外国人といったマイノリティを活用することが効率的だと考えるようになった.2006年から5年間の方針を示した政府の「第三期科学技術基本計画」には,「女性研究者の活躍促進」という項目が盛り込まれ,組織の中の女性比率を2010年までに25%にあげるという目標も掲げている.


 ・・・上がるかぁ? あと2年だぞ。

『科学者ってなんだ?』 p.130
 配偶者がいる研究者は,男性が70%,女性が48%.
 子どもがいない研究者は,男性が42%に対して,女性は67%だった.
 この結果からも,女性は男性に比べて「結婚か仕事か」「出産か仕事か」という二者択一を迫られながら生きていることがうかがえる.
 [〜中略〜] 
 就学前の子どもがいる研究者に「主に誰が育児を担当しているか」を尋ねたところ,男性の85%が「配偶者(妻)」と答える一方,女性の83%は「保育園」と答えた.


 こんな状態で、しかも「女には才能がない」という偏見が蔓延しているこの国で、そこまでして科学やるメリットは少ないだろ。
 メリットがない、としか見えない状況を改善してくれないと。

『科学者ってなんだ?』 p.131-132
女性研究者が少ない原因は,
・大学進学者が少ない
・就職や昇進で「ガラスの天井」がある
・結婚や出産,転勤などのライフイベントと両立できない
の3つに集約できるだろう. [〜中略〜] 
 「なぜ科学技術分野に女性を増やさなければならないのか」という問いに対しては,「科学技術の成果を受け取る社会の男女比が5対5だから」という答えが適切だろう.


 それ以上に、「親が女子に期待しない」というなさけない国民性をなんとかせんと。
 というか、「科学技術の成果を受け取る社会の男女比が5対5だから」という物言いでは、なんか微妙に「女には科学の才能はないけれど」という偏見の前提がくっついているように見えて大変気持ち悪い。

『科学者ってなんだ?』 p.128
 女性研究者の6割が在籍している大学で,彼女たちがどう活躍しているかを見てみる. [〜中略〜]  ポストが上に行くほど,女性比率が下がっている.
女性学長は国公私立全体では7.6%.国立に限るとわずか2.3%である.


 日本では女性が昇進できない、排除される。もしくは「部下に紅一点だけ入れればじゅうぶん」。whoa
 女性が学長さんになれるのは大変まれなことであり、しかも日本はそれを恥だとは思っていない。

 稀少な女性学長さんからの発信が、先月、世界トップクラスのネイチャー誌に掲載されていた。

先進国の中でも女性の割合が極貧な国の一つ、それが日本
 日本の科学は、ますます女性を必要とする。
 なぜ、日本の科学は女を適切に遇しない?
2008/02 Nature 451, 865 | doi:10.1038/451865a  One woman is still not enough
現・お茶の水女子大学 学長、郷 通子
 7年前、名古屋大学の当時、「学部会議には女は一人で十分なんですよ」といわれるありさまであった日本の科学界
 郷さんたちは、女性の学者をサポートするよう政府に嘆願した
 2006年に女性研究者支援のための予算が出た
 でも、お茶の水女子大は、87もある国立大学でまだ唯一の女性学長の大学なのである
 女の見解は低くみられる上、創造的なアイデアはつぶされる
 まして、子育てに適した環境など全然整っていないし
 郷さんは先駆けとして、お茶の水女子大で「残業禁止」令を発動


●右画
 この記事に対して、海外では「なにそれ!?」とけっこうざわめいていたのだけれど、肝心の日本側はほとんどスルー状態だったというのが(もしくは自分の守備範囲ではリアクションが見えなかった)めちゃめちゃ情けない。
 唯一見かけたブログエントリにしても、女性科学者ご本人が肝心の「女性には何がどう不利であるのか」という点にはいっさい触れずに「自分は科学者であり女性として扱われたくない」と述べたてているだけであったわけで、この、「男性規範でできあがっている科学者のありよう」という部分はノーカウントで視野にない見解をあからさまに表に出してはばからない、この女の感性はいったいなんなのだろう、と目が点になった。
 女自身が逆境にあることを認めないようにさせる圧力が、あったりするのだろうか?
 前世紀の大昔、「男性規範に迎合して成功した女性は、男性規範に合わせない女性を貶めにかかる」と指摘する論があって、印象に残っている。
 もしかして、これはその指摘を地で行っている例、に含まれるものだったろうか。


「トップクラスの女性研究者不足は、素質の性差ではなく偏見が原因!」
 科学に向いているのは男か女か
 元男性である性転換女性科学者が一言申しあげます
2006/07 EurekAlert Transgender experience led Stanford scientist to critique gender difference


 「科学技術の成果を受け取る社会の男女比が、5対5だから女性を増やさなければならない」という論法では「女性の能力が劣っている」という偏見前提に迎合しているだけのように見えかねない。
 そうではなく、「人的資源の半分を抑圧している状態では国力の低下を招いていないか/企業力を弱めていないか」という方向で見るほうが建設的だろう。


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コメントアンカー - さんのコメント 【2008/04/02 22:00】 URL [編集] #-

偏見あるね。
このプロジェクトは当初から女性を中心に……って!!
だから何だ? って感じがします。

よね。

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