癌のため、奈良市の病院で17日死去、63歳。
考古学者。 奈良女子大特任教授。
元・奈良文化財研究所(奈文研)飛鳥藤原宮跡発掘調査部長
:・・・2005年時点ではまだ奈文研の部長をなさっていたので、60才の「定年」で退任されていたのだろうか。
:研究者の定年は(分野にもよるだろうが)60才は早すぎないだろうか。大きな損失に見えるのだが。
富山県出身。1945年生まれ。 1972年に奈文研に入所。
平城宮跡、飛鳥藤原宮跡の発掘調査を担当し、実態解明に力を入れる。
高松塚古墳やキトラ古墳の壁画保存についての、文化庁の検討会や委員会のメンバーを務めた。
古代祭祀の研究者としても著名。
... 以下つづき...

2008/03【日本語記事】朝日新聞「奈良女子大特任教授の金子裕之さん死去」http://www.asahi.com/obituaries/update/0322/OSK200803210136.html
2008/03【日本語記事】共同通信「金子裕之氏死去 奈良女子大特任教授」http://news.goo.ne.jp/article/kyodo/nation/CO2008032201000442.html
2008/03【日本語記事】毎日新聞「訃報:金子裕之さん63歳 元・飛鳥藤原宮跡発掘調査部長」http://mainichi.jp/select/person/news/20080322k0000e060036000c.html


「水と祭祀の考古学」
奈良県立橿原考古学研究所附属博物館編
学生社 2005/01
第2章 金子裕之「令制下の水とまつり」 所収
この本はほかにもいろいろと面白い考察が並んでいて、けっこう堪能させていただいた覚えがある。

「環境考古学への招待 発掘からわかる食・トイレ・戦争」
松井章著
岩波書店 740円 2005/01
p.117
出土した木簡の中に子供を産んだ母犬の餌に米を支給すると記されたものが含まれていたことから、長屋王邸では、貴重な米をイヌの餌にしていたと話題になった。まず奈良文化財研究所の金子裕之氏は、この米はイヌを太らせて食べるためのもので、客をもてなすための食用犬だったという説を発表した。この説はたちまち、韓国・朝鮮の歴史、考古学者の目に留まり、このイヌは渤海(ぼっかい)の使節をもてなすための犬醤(ケジャン)料理用に飼育されたものだという説まで発表されるに至った。
この本は、値段の割にメチャ興味深く面白い、コストパフォーマンス優良なオススメ本。


「古代中国の犬文化 食用と祭祀を中心に」
桂小蘭著
大阪大学出版会 2005/02
p.13-14
近年日本列島各地の遺跡から、次々と肉を食用した、または肉を取った後の犬の骨が見つかった。奈良時代初期の長屋王の邸宅跡から見つかった「木簡」には飼い犬のことが書かれており、当時庶民にとっては貴重な米で飼育されていたこの犬について、長屋王本人、または自邸に招かれた新羅などの外国使節用の食用犬であった、と史家の金子裕之は指摘している。
これもオススメの力作本。ちょっと高価なので、図書館経由がリーズナブル。

『埋もれた楽器 音楽考古学の現場から』
笠原潔著
春秋社 2004/01
p.168
装飾と言えば、奈良文化財研究所で見せてもらった二点のミニチュア琴にもびっくりした。奈良市おの平城京左京七条一坊の東一坊大路/おおじ/の西側の側溝から出土したものである。どちらも木簡を転用しており、表面に文字が残っている。全長二五・一センチ、幅三センチほどの大きさで、琴の上板、槽の底板と前後の小口板、左右の磯板をそれぞれ別々な薄板で作っている。上板の下に左右の磯板を装着し、その下に底板を置き、底板とつながっている前後の小口板を持ち上げると、見事な槽作りの琴のミニチュアに復元できる。八世紀のものである。
このミニチュア琴のことは、金子裕之先生の文章(『平城京の精神生活』。角川書店〔角川選書〕、1997年)を通じて知っていたが、発掘報告書を見ていなかったため、奈良文化財研究所で現物を見るまで、それに目玉が描いてあることは知らなかった。
そう、両方の琴とも、一方の小口面に、左右の目玉が描いてあったのである。
おまけに、どちらの琴も、左右の磯板には三角形の鱗状の模様が描いてある。
この琴に目玉が描いてあるとは想像もしていなかったので、現物を目にした途端、あっけにとられ、これが何を意味するものか、その場では見当が付かなかった。
古代の音楽のリアル。楽器をめぐる文化差と謎の数々。
この本もかなりワクワク感高めの良書だった。

『しぐさの民俗学 呪術的世界と心性』
常光徹
ミネルヴァ書房 (2006/09)
p.203
土井卓治は先の論文で、神社の屋根の千木や烏おどしと称される民家の棟の×型の押え、入れ墨にみられる×印などいくつかの具体例を挙げて解説をしている。たとえば、シメ(〆)について「今でも封書の封をしたところに書かれる。これはそこに×印をする風があってそれを封じてしめる意味でシメと呼ぶようになり、胴長の線がカタカナのようになった。恐らく貴重なものを封じこめた時×印をしておくことが行なわれていたのであろう」と説く。この推測と関わる問題は、金子裕之が「記号から呪力ある文字へ」と題して考古学の立場から言及している。金子は、円筒埴輪の十文字について触れたあと「+や×印は封の意味があり、埴輪に限らない。島根県東笠根一号墳では、赤色顔料で須恵器の杯と蓋に+を描き、封の象徴としていた(勝部昭「+印のある土器」)。 [〜後略〜]
この本は、日本の古今東西、現代含め、どのようなおりにどのようなしぐさをとることが「理にかなっている」もしくはそうするべきであるとされていたのか、さまざまな事例を挙げて考察を展開する。
霊柩車を見たら親指を隠せ、指の隙間から異界をのぞき見る、印を切ってケガレを避ける・・・
それら所作を支える意味の構造とは。
ぎっちり考察をしつくしているわけではないが、現代の事例含めて数々の例が取りあげられているぶん、過去の異界観に縁遠い初心者にもなじみやすいのではないかと思う。

金子 裕之(かねこ ひろゆき)氏
『平城京の精神生活』(魚川選書)、『木簡は語る』(歴史発掘12講談社)、 『まじないの世界1(縄文,古代〕』(日本の美術360至文堂)などを残して、鬼籍に入られた。




『古代庭園の思想―神仙世界への憧憬』 (角川選書) 金子 裕之 (編集) 角川書店 (2002/06)
『飛鳥・藤原京の謎を掘る』 千田 稔, 金子 裕之 文英堂 (2000/03)
『木簡は語る』金子 裕之 (著) 講談社 (1996/05)
『平城京の精神生活』 金子 裕之 (著) 角川書店 (1997/06)
![[ EP: 科学に佇む心と身体 ]](http://homepage1.nifty.com/NewSphere/transparent.gif)







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