
長距離の渡りをする鳥たちは、右の目で(!)磁石の力を見ることができるらしい。
でも、広い地球上にちらばる各地に生活を託しているぶん、気候変動や環境変化で命を失いやすい。
そして、特定の季節の特定の場所にしかいないぶん、人間に「減っている!」とは気づいてもらいにくい。

【長距離移動になんでも使おう】
渡り鳥はいろいろな手がかりを使って旅をする
2006/08 EurekAlert Light guides flight of migratory birds
太陽、星の位置、大地の磁場、そして極光
夕日と地磁気に頼る渡り鳥
2004/04 BBC News Migrating birds rely on sunsets
人間が造った道路を目印に、渡りをするハトたち
2004/07 EurekAlert Putting GPS to work, researchers shed light on road-following by pigeons
本能よりはハイウェイ 道路づたいに家に帰るハト 〜イギリス
2004/02 BBC News Pigeons reveal map-reading secret
2004/02 Nature Science Update Pigeons take the highway
:こう並べてみると、かなり「目からの情報」に依存してますね。

:渡り鳥の目に見えているものは、「光(ヒトの可視光線)」だけじゃない。
:もしかしたら、鳥には磁石が光り輝いて見えているかもしれない!
... 以下つづき:渡り鳥には磁力線が見えている...

【渡り鳥には磁力が見える】
鳥の眼には地磁気が見える
鳥目の光受容体は地球の磁場を検知する
2004/05 EurekAlert Bird's eye views earth's magnetic lines
Nature article reports photoreceptors involved in sensing the earth's magnetic field
2004/05 共同通信 体内の化学反応で進路決定 渡り鳥の秘密、実験で解明
共鳴効果は鳥類の磁気コンパスとしてラジカル対機構があることを示唆する
2004/05 Nature 429, 177 - 180 Resonance effects indicate a radical-pair mechanism for avian magnetic compass
鳥は北極を左脳で見る
2002/10 【日本語記事】Nature 渡り鳥の磁針方位決定に関する脳の左右差
2002/10 Nature 419, 467 - 470 Lateralization of magnetic compass orientation in a migratory bird
ヒトの言語野に見られる機能局在みたいに、鳥は地磁気を目で見るときには右眼/左脳半球を主に使っている
「翼よ、あれが北の緋だ!」
鳥は磁北をリアルに『見て』いるかもしれない
2007/09 news@nature.com Birds may 'see' magnetic north
Study links migratory navigation systems in the eyes and the brain.
眼と脳が、渡りのナビゲーション・システムでつながっておりますぞ
渡りと地磁気
磁気変化で休息場所や給餌場所を記憶している鳥たち。
2001/10 NewScientist Magnetic fields signal refuelling stops for migrating birds
2001/11 Nature 414, 35 - 36 Bird migration: Magnetic cues trigger extensive refuelling
人工的な磁場で鳥の行動を観察しました。
ニワトリにも、地磁気感覚
2007/07 EurekAlert Chickens also orient themselves by the Earth's magnetic field
渡り鳥以外の鳥だって磁気センサーをお持ちです
その後の記事の追記:
渡り鳥は光化学物質コンパスをナビゲーションに使っている
2008/04 EurekAlert A model photochemical compass for bird navigation
光受容体理論は、鳥が磁気オリエンテーションを実行するとき青光受容体が渡り鳥の網膜で検出されたという真相によってサポートされる
2008/04 EurekAlert International team of researchers explain how birds navigate
地磁気ナビゲーションの分子メカニズム
2008/05 Washington Post Molecular Action May Help Keep Birds on Course
渡り鳥は方角を定めるために、地球の磁場を使用する
:磁場がふらふらしている場所にニワトリ小屋を置いていたら、全部ノイローゼチキンになってしまうのかもしれない。

:そんなスゴイ目を持っている渡り鳥さんたち。
:中にはもう、行くところまで行ってしまっていたりする種類もあるし。
【ど根性渡り鳥】
不眠不休ナンバーワン
渡り鳥はいつ寝ているの?
アラスカを出発したオオソリハシシギは、なんと南半球のニュージーランドに着くまで、まんま8日間1万kmも飛びっぱなし!
2007/10 New York Times In Study of Human Patterns, Scientists Look to Bird Brains
By CARL ZIMMER 〜カール・ジンマー
秒単位で寝ているかもしれない、脳の一部だけ寝ているかもしれない、もしかするとアッチの世界に行ってしまっているのかもしれない。まだ未解明の謎なんだ。
:不眠不休で飛び続ける鳥さんには、ヒトにはあずかり知らない「半眠半覚醒トランス」みたいな状態も、科学的には推測としてアリらしい。
オオソリハシシギの画像
移動ナンバーワン
ニュージーランドから北太平洋まで、年間64000km飛ぶハイイロミズナギドリ
2006/08 National Geographic Longest Animal Migration Measured, Bird Flies 40,000 Miles a Year
発信器をとりつけて確認いたしました。
ハイイロミズナギドリの画像
:こう、そこまで全存在を移動に賭けなあかんのかい!とあきれるほどにエネルギーを費やしまくっても、これらの鳥たちには、一箇所に留まるよりは何かが有利なわけだ。

【渡り鳥はなぜそんなに移動する?】
渡り鳥が旅をするその理由
まずは、季節によって採れる食物の量が違う場合に、生き物の渡りが始まると見た
2007/02 EurekAlert Why migrate? It's not for the fruit
2007/03 EurekAlert Why do birds migrate?
群で餌を探し回る鳥より、個々に孤立した生活をする種のほうが、渡り率が高め:集団生活だと、餌が減る季節になっても効率的に餌を探せるらしい。
短距離の渡りは長距離の渡りと本質的に違いはしない、長距離渡りは短距離渡りの発展型。
:餌が、果物だろうが花の蜜だろうが昆虫だろうが、そこは関係ない。
:季節によって、餌になるものの量が違う場合、厳しい季節に苦労して餌を探すよりは、餌がある場所にダッシュしたほうが手っ取り早い。
:だって、翼があるんだ! 鳥は天然のジャンパーだ!

:でも、それじゃあ厳しい冬になっても、残っている鳥、頑張っている鳥がいるのはなぜ。
:たいがいの食べ物は、確実に季節によって不作になる。
:なぜすべての鳥が、渡り鳥ではないのだろう。
【渡り鳥はバカ?天才?】
脳が重ければ渡らなくていい?
渡りをしない留鳥は脳が大きめ
2005/06 news@nature.com Big-brained birds less likely to migrate
Clever species stay put for winter, while others flee.
2005/07 【日本語記事】 記事 : 大きな脳を持つ鳥達は、あまり渡りをしない
餌をとるための工夫が多くできる鳥ほど、一定地域に留まりうる
鳥の脳が持つ高い可塑性
海馬が秋に増大する 食料を蓄えた位置を記憶
2000/09 THE TELEGRAPH Brain wave that helps hungry birds
:海馬は脳の記憶処理係です。
:そして、脳は身体の中でもめちゃめちゃエネルギーを食いまくる燃費の悪い臓器。
:エネルギーをムチャ使わせてまでしても、記憶することや考えて工夫することにメリットがある場合に、脳は発達することが許される。
:無理して脳にカロリー食わせた結果、それをおぎなってあまりあるカロリーを冬の季節ぶん獲得できるなら、鳥は危険な長距離移動(渡り)はせずに、留鳥暮らしになる。
※ 前段の記事では、「単独行動種で渡りが多く、集団行動種で留鳥が多いのは、集団で餌を探すほうが効率がよいから」という解釈のようなんだけど、これは集団エサ探しの効果というよりは、 マキャベリ知能のおかげで冬のエサ確保の余力がある、と見たほうがいいってことはないか?

【渡り用の特殊な身体】
:渡り鳥は、より良い場所に移動することに賭ける。
:いかんせん、渡り自体は大変危険な行為だ。
:それでも、リスクを上回るすばらしさが移動先にあるならば、どんどん移動する。羽を伸ばす。
:渡り鳥は、特殊な移動用機能だけを伸ばし、脳全体の燃費は低く抑えた状態で、効率的に楽園を渡り歩く。
時期によって、胃袋も変身
渡りの準備期間には胃袋も大きくなる
2003/07 EurekAlert Migration takes guts
Birds modify digestive physiology during migration
渡りの間、消化器官をカスタマイズする鳥たち
渡り鳥、夜間飛行用の脳機能をお持ちです
2005/05 EurekAlert Migratory songbirds have a specialized night-vision brain area
一番ラクなのは空?
2003/06 Nature 423, 704 Avian metabolism: Costs of migration in free-flying songbirds
なんと、渡り鳥は休息地点にいるときよりも、空を飛んでいるときのほうが、カロリー消費が少ないのです。

:でも、留鳥より脳がショボイのに、旅には脳はいらないの?
:渡り鳥はどうやってものすごい距離を迷わず移動して行けるんだろう。
【生まれ持った才能と、熟練の勘所】
渡りをするミヤマシトドたち、子供は天然のコンパスを持っているけれど、大人は学習した飛行地図を持っている
2007/11 EurekAlert For migrating sparrows, kids have a compass, but adults have the map
大幅に道を外れた場合、大人はそれなりに航路を修正できるが、子どもはむやみに一方向を目指して飛ぶ
2007/11 ABC@オーストラリア Adult songbirds map out a way home
渡り鳥は緯度・経度を検出する
でも、その方法はミステリー
2008/01 EurekAlert Migrating birds detect latitude and longitude, but how remains a mystery
春の渡りをやっている最中のヨーロッパヨシキリを捕まえて、1000km 拉致(らち)ってから放してみたんだけれど、ちゃんと方向修正して渡りを続けていたよ。
けっこう複雑な航路修正能力を持っているみたいだ。
ヨーロッパヨシキリの画像
ミヤマシトドの画像
:まず、天然の「渡りナビ」は備わっているらしい。
:チョウチョの渡りなんかだと、寿命が短くて経験も記憶も何も関係ない本能移動だろうね。
:でも、渡り鳥さんは、「なんだかわかんないけどあっち!」と人工無能レベルに終始しているだけではないらしい。
:鳥は寿命が長い。何十回も渡りの経験を蓄積できる。記憶力もバカにはできない。
:渡りの経験を重ねているほうが、航路修正のスキルが卓越しているらしい。
その後の追記:
2008/04 EurekAlert Flying off course
道から外れた渡り鳥
なんでヨーロッパにアジアからの渡り鳥?
渡り鳥は、方向を間違えるけれど、距離は間違わないわけで

:良くある誤解に、「生態系を守るためには小さい魚は逃がしなさい、大きな魚を獲って食おう」というものがある。
:ダメダメ、生態系を守るなら、繁殖力のでかい大きな魚こそ保護すべし。
:そこからすると、渡り鳥の場合はどうなんだろう。
:経験を重ねた個体のほうが、若い者より繁殖はうまいだろうか。

:生態系が安全なときは、子育てと旅に慣れた熟年の鳥を大事にするほうが、種の保存には良いのかもしれない。
:でも、いまどきのような環境がヤバヤバになってしまった地球では、残念なことに年寄り鳥の知恵と経験が役立たない。
:人間の場合に似ているね。
:変化の乏しい安泰な時代には、経験者の経験がものをいう。
:激変する世界になると、年寄りの経験が役立たない。
:簡単に弱者にされ、安全を奪われる。
【異変が渡り鳥夫婦の未来を壊す】
:渡り鳥さんはチョー長距離を移動する。
:そんな流れの暮らしであっても、営巣地では、毎年同じ相手とペアを組むケースが少なくない。
:まるで七夕。
:来年の、今月今夜のこの場所で、同じ相手と、同じ場所、同じ時間にまた会おう!
:でも、その、いつもの大事な場所が、突然無くなってしまったら・・・
つがいの絆:渡り鳥でみられる目的地到着の同調
2004/10 Nature 431, 646 Pair bonds: Arrival synchrony in migratory birds
サンショクアメリカムシクイ
ハゴロモムシクイの若いつがいが永久の住処を定める基準は何
2008/02 EurekAlert Early environment may be key to determining bird migration location
数百マイルの範囲内で、どこを営巣地として選ぶのか。
どこに巣を作るかは、最初の年の気候しだい。
そして、いったん選んだ営巣地は、一生変更せずに使い続ける。
温暖化で気象がおかしくなると、その後の繁殖に失敗しかねない。
ハゴロモムシクイの画像
:「あそこに行けばいいことがあるんだ」そこに賭けているのが渡り鳥。
:急に状況が変わってしまったら、賭けが失敗する。
:渡りが天国行きになってしまう。

【渡り鳥激減中】
:地球環境の激変で、長距離を渡る生物がどんどん死んでいっています。
:これに関する記事は、以下に古い順に並べていきます。
:何年も前から危ぶまれているけれど、直接我々にできることは???
:けっきょく、温暖化を防ぐとか、湿地を守るとか、まわりくどーい間接的な努力でしか対処できないのか。
渡り鳥の減少には地球温暖化が関係している
2003/03 EurekAlert Climate change linked to migratory bird decrease
留鳥にとっては有利な環境になるかもしれないが、渡り鳥では減少につながる。
地形変化がおびやかす渡り鳥の命運
2005/05 EurekAlert K-State professor studies how landscape dynamics affect extinction risk for migratory songbirds
環境の激変
「渡り鳥の数が減ったな」と気がつかれる頃にはもう手遅れかもしれない
科学なポッドキャスト
Fanning the Feathers 【MP3ファイル 2分】
2006/03 Earthwatch Radio
発電用の風車に巻き込まれて死ぬ渡り鳥たちがいる。
ウィスコンシンに大規模な風力発電施設が誕生する予定だ。
でも、その発電所で死ぬ鳥の数は、伝送線・電波塔・ビルのガラス窓・車・猫や突風などによる犠牲数に比べれば微々たるものだろう。
新型は、より鳥にやさしいものにするよ。
:
この音声ファイルはウェブ上に台本が公開されています。
Earthwatch Radio
「読みながら聞く」ことができて、英語のヒアリング練習に持ってこいです。
科学なポッドキャスト
High and Dry 【MP3ファイル 2分】
2006/03 Earthwatch Radio
地球温暖化に伴う気候変動で、アラスカの湿地が干上がりつつある。
乾燥地の植物が侵入して野火も起こるだろうし、渡り鳥の繁殖もおぼつかなくなる。
:
この音声ファイルはウェブ上に台本が公開されています。Earthwatch Radio
「読みながら聞く」ことができて、英語のヒアリング練習に持ってこいです。
いつもの時期に食べ物がない!
地球温暖化で虫と鳥の繁殖時期が合わなくなる
2006/05 New Scientist Early worms leave the birds behind
2006/05 Nature Climate change and population declines in a long-distance migratory bird
2006/05 【日本語記事】Nature 生態 : 温暖化に繁殖時期を合わせられない渡り鳥
2006/05 読売新聞 渡り鳥ピンチ、温暖化でエサ発生時期ずれる
渡り鳥、激滅中 〜イギリス
2006/05 BBC News Migrating birds suffer huge loss
特に、長距離を渡る種類の鳥、サハラ砂漠を越えてやってくる鳥で、減少が顕著。
やはり気候異常が原因か。
異常気象で渡りがたいへん
2007/05 Discovery Warming Threatens Migratory Birds
温度がおかしいわ、方向感覚は失うわ、餌場が無くなるわ、湿地が消えて行くわ・・・
一部の渡り鳥が減ってきているのは気候変動のせいじゃないか
2007/08 BBC News Climate fear for visiting birds
イギリスの渡り鳥、ツクシガモ、マガモ、キョウジョシギなど7種が減っている
ツクシガモの画像shelduck これかわいいね
マガモの画像mallard
キョウジョシギの画像turnstone
新しい記事の追記:
2008/06 EurekAlert Birds migrate earlier, but some may be left behind as the climate warms rapidly
鳥は早々に移住していくのだが、一部の鳥は気候がすみやかに暖まる中に取り残される
多くの鳥は、アメリカ東海岸に沿って温度が暖まるにつれ早めに各春到着している
しかし鳥の旅行が遠いほど、彼らの足並みはそろわなくなる
:日本では、渡り鳥の減少は確認されていますか?


3月の新刊
『渡り鳥から見た地球温暖化 改訂版』
中西 朗著
成山堂書店 (2008/03)

No Way Home: The Decline of the World's Great Animal Migrations
David S. Wilcove (著), Louise Zemaitis (イラスト)
●故郷に帰れない:失われゆく大規模な動物の渡り行動
Island Pr(2007/10/15)
書籍情報と書評:アマゾン 日 米 英
カール・ジンマーによる書評
2008/01 New York Times Migration, Interrupted: Nature's Rhythms at Risk
撹乱される渡り:自然のリズムが危機にある.
へぇボタン:へぇ〜
と押してみるもよし
![[ EP: 科学に佇む心と身体 ]](http://homepage1.nifty.com/NewSphere/transparent.gif)







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