[ EP: 科学に佇む心と身体 ]

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北海道の伝説は生きている:神様お持ち帰り

カテゴリ[科学に佇む2008年] 2008/03/04
●北海道 北国の昔話、エゾの先人が暮らしを送った世界。

●画
『伝説は生きている 写真で見る北海道の口承文芸』
 高田紀子
 製作協力:北海道新聞社出版局
 2007/12 ISBN: 9784901644914

 リンク 札幌市内の図書館ではここにある
 リンク 北海道の自費出版 アイワード


 そのへんでは売ってない本です。
 アマゾンでもbk1でも買えません。
 泣く子もだまる自費出版の世界です。

 大型変形版でフルカラー、厚みもたっぷりソフトカバーの豪華本。自費出版とは思えないほどのよくできた体裁と価格で、最初見たとき「どこの出版社から出たんだ?」としばらく本をためつすがめつしてしまった。(自費じゃない企画モノでも、ひどい編集・体裁の本が世の中にはよくあったりするわけで)

 北海道各地の、メジャーな観光地ではないけれど、由来の深い土地・光景・アイテムの美麗な大判写真がてんこ盛り。
 これはオイシイ。

 面白いのは、こう数々載せられている写真たち風景たちが、場所はまぎれもなく北海道なのに、妙に北海道っぽくないこと。
 寺や地蔵、古民家だったり断崖と磯の海岸だったり。妙に内地っぽい。

... 以下「神様お持ち帰り」の話...

〓〓〓 EP 〓〓〓

●北海道 現代北海道のイメージは、自分的にはサイコロのような耐雪住宅やプレハブのような量販店の無機的な姿ばかり。ワビサビゼロの世界にみえてしょうがない。(すまん)
 → 『 町がどこも同じに見える:日帰り北海道強行軍 』
 ところが、本書ではその今どきの建築物が、写りにでしゃばっていない。そのせいで「北海道っぽくない」のだろうか。はたまたまっすぐ広大な観光用風景ではないからか、雪のない季節の写真だからか。
 どうにもこうにも、数々の写真が、いにしえの内地、本州や四国の田舎っぽいんだ。

 そうか、新しもの好きぶっとび北海道も、一皮めくれば開拓前からの古き観念のくすぶりが、有形無形に確実に残っているわけか。
 内地から引きずってきた、理屈を超えた観念たち。

 さまざまな、北海道内各地の伝説、言い伝え物語が、アイヌの伝承も含めて、紹介されている。
 著者が実地に聞き及んだものもあれば、入手しづらい資料をあたって書き起こされたものもある。

〓雪〓

●北海道 著者がリアル接触した由来・伝承話が艶が良い。
 中には、マジなまなましい「信仰と誤謬と結果オーライ?」的展開が前面に出ている”味わい”深い話も登場する。

 まあーその、かいつまんでいえば、神様が好き勝手に引っ越しさせられちゃってんだよね(?)。
 札幌の地蔵さんがあっちゃこっちゃ移転させられてしまっていた話もありいの、小樽(おたる)と当別(とうべつ)を股にかけるこんな話もありいの↓

●北海道 とある神聖な場所についての由来を調べていたところ、似た呼称を持つ神社があることを知る。何か話を聞けるかと出向いて宮司(ぐうじ)さんに話を振ってみると、「信者さんをつれてその神聖な地を訪れたところ、信者さんが良いご神体(大黒様)をお見つけになられたので(!)、ご縁だから当別のご自宅に持ち帰りなさいと進言しましたよ」という話が。
 え!?
「見つけ」たら、神様は持ち帰っていいのか!?
しかもその宮司氏、
大黒様を当別に持ち帰って二年程経った頃、私の夢枕にその大黒様が立ちましてネ、『お蔭で私は当別で良いもてなしを受け、何不自由なく暮らしている。だがとても寂しい。赤岩にいた時は岩頭の上にえびす様がいて色々とお話しをしていた。楽しかった。もう一度会いたいものだ』

と神様にいわれて、えびす様の元に大黒様を戻しに行くのかと思いきや。
なんと、えびす様も、鎮座していた場所から連れ出して当別に運んでしまったというのだ。
 すげ。
でもって、元の神聖な場所を管理なさっていた家系では、「えびす様の魂は小樽の菩薩に入れ替えてあるので、えびす様が当別で大事にされているのであれば無問題だ」とのこと。

 いやいや、よくはわからないが、各人各所、神様をめぐってそれなりに納得ができあがっているらしい。
 納めどころに納まればそれで良し、そして納めどころに納めるスキルが卓越していれば無問題。
 そんな、古来から脈々と続く、融通無碍(ゆうづうむげ)にタフなことわりに則(のっと)っているように見受ける。
 ちょっと信仰的論理に疎い身にはよくは理解できないが。tang

 うーん、うーん、下手な怪異譚(かいいたん)より深いような気がする。こぎれいに伝承化する前のリアル民俗学実態。

 そんなこんなで、観光用ではない、北海道のいにしえの謂われの世界。
 未知・未整備の北海道を楽しみたい人にはオススメ。

●●●○●●●

 えーと、苦言を呈するならば、登場する各地がどこにあるのか、具体的な地図が載せられていないこと。
 あまりに詳しい場所を示すと現地に迷惑がかかるから、なのかもしれないけれど、ドサンコでない者にもなんぼか位置関係の勘がつかめる程度のものでいいから、地図・図示がほしかった。

 なお、本書で参考資料として挙げられていた書籍類は以下。

「北海道昔ばなし 道央編」 北海道口承文芸研究会編 中西印刷 1989
「北海道昔ばなし 道南編」 北海道口承文芸研究会編 中西印刷 1989
「北海道昔ばなし 道東編」 北海道口承文芸研究会編 中西印刷 1989
「北海道昔ばなし 道北編」 北海道口承文芸研究会編 中西印刷 1989
「北海道のむかし話」(北海道むかし話研究会編 日本標準発行)
「北海道のむかし話」(児童図書研究会編 みやま書房)
「北海道の伝説17」 更科源蔵・安藤美紀夫著 角川書房 1977
「北海道の伝説」 北海道郷土教育研究会編 日本標準発行 1981
「北海道の博説」(更科源蔵・渡辺茂著 柏葉書院)
「檜山の史跡と伝説」(葉梨孝幸 第一印刷所)
「乙部むかしばなし」(葉梨孝幸)
「江差百話(民話・伝説・史話)」(江差民話研究会・小林優幸 須田製版)
 研究「郷土史ひろしま町」(大谷義明 広島町郷土史研究会)
「ぐるっと案内」(いしかりガイドボランティアの会 石狩観光協会)
「月間さっぽろ(北のトレモロ)」(菊池寛著 財界さっぽろ)
「わが夕張(知られざる炭坑の歴史)」(夕張働くものの歴史を記録する会編 機関紙印刷出版企画室)
「地の底の笑い話」 上野英信著 岩波書店 1967
「栗山泣く木物語」(坂井菊二郎 野薔薇舎)
「石山夜ばなし」 石山物語(石山小学校開校八十周年記念協賛会)
「法龍水ものがたり」盤渓妙福寺縁起 井門半次郎著
「開拓地蔵の由来」(三関与惣吉氏の手記)
「とよとみの民話」(北海道豊富高等学校郷土研究部 松岡印刷所)
「北海道の義経伝説」 斧二三夫 みやま書房 1981
「アイヌ伝説集」 更科源蔵著 北書房版 1971
「アイヌ伝説集・阿寒地方篇」(高橋真著 郷土研究社)
「室蘭ホスピタリテイー」(推進協議会)
「ソバ喰い地蔵」奇聞(北海道通信社)
「せたかむい・古平の民話」(古平町史編纂室)
「恋の弁天島」(小林定典著 朝里郷土史資料調査研究所)
「祝津町史」(樋口忠次郎編著 祝津郷知会)
「旧・入[舟+可]村役場調」
「洞爺村」(虻田郡洞爺村 昭和五十二年発行)
「上士幌町史」(上士幌町史編さん委員会 上士幌町役場 昭和四十五年発行)
「釧路町史」〈伝説〉(釧路町史編集委員会 釧路町役場 平成二年発行)
「増毛町史」(増毛町史編纂委員会 増毛町役場 昭和四十九年発行)
「北見市史」(北見市史編纂委員会)
「端野の夜明け・端野の民話」(端野小史編集委員会)
「丸瀬布町史」(丸瀬布町史編集委員会)
「郷土研究・地理総」(北見郷土研究会)
「宗谷郷土史」(飯田勇 昭和三十四年発行)


 新しい本から、そーとー古いレア文書まで、いろいろ。
 これから伝承を調べてみようというお方には便利なリストかと。

 上掲リストにはなかったけれど、比較的新しい児童書として、こんな本も出ている。

cover
 『読みがたり 北海道のむかし話』

 北海道むかし話研究会 (編集)
 北海道学校図書館協会 (編集)
 日本標準 (2005/07)
<北海道のむかし話を、アイヌの民話、本州から渡ってきた和人のむかし話、開拓の歴史にまつわる新しいむかし話に分けて収録。>.

 北海道観光の前に、子どもにこういう本を一冊与えておくのも面白いかもしれない。


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