[ EP: 科学に佇む心と身体 ]

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「3人の親」を持つ遺伝子組み替え人間は昔から

カテゴリ[科学に佇む2008年] 2008/02/06
2008/02 【日本語記事】ワイアードビジョン 「3人の親」を持つヒト胚を作成
2008/02 BBC News Three-parent embryo created
効果的に胎児にミトコンドリア移植を与えた。


■このタイプの人工操作で「3人の親」を持って生まれるハメになった「遺伝子改変人間」さんは、すでにけっこうこの世にいらっしゃいます。

●右画
遺伝子が組みかわった赤ちゃんができちゃった!
 「第三者のミトコンドリア遺伝子が混じってしまいました!
  中には遺伝的に障害を持った子も! …堕胎されたけど」
2001/05 cnn.co.jp 遺伝子を組み換えた赤ちゃん誕生 世界初
 二人の母さんに父さん一人
 アメリカの不妊治療病院で約30人(15人)の誕生が判明
 他人の細胞質を卵子に注入→両親以外のミトコンドリア遺伝子を確認
2001/05 The Observer 親三人の赤ちゃんに遺伝子障害の恐怖
2001/05 BBC  遺伝子操作ベビーを望むカップルからの電話が殺到
 でもまだあくまでテスト段階  子孫への影響が定かではなく、実用にはほど遠いよ

 2001年卵子の怪、てなもんで。
 こんな結果と騒ぎになるとは思っていなかったまま、生まれてしまった子たちですね。
 健康な子もいれば、死んだ子もいた。
 当時の騒ぎは過去記事庫のほうに並べてあります。
 → 2001年『遺伝子が組みかわった赤ちゃんができちゃった!』

 発覚が7年前の話で、子どもたちはそれまでに生まれているわけですから、元気な子はもう小学校に通っているんでしょうね。

■ミトコンドリアの入れ替えに関しては、こんな報告もあります
2000/09 Fertil Steril  Mitochondrial DNA heteroplasmy after human ooplasmic transplantation.
ヒト卵質移植後のミトコンドリアDNA異形成

 異形成、つまりトラブルがあったと。

... さらに記事紹介のつづき...

〓〓〓 EP 〓〓〓

 うちの過去記事庫の奥には「生まれる前に遺伝子を改変した場合、それはあなたの子ですか?」というコーナーがありまして、この手の記事を並べてあります。
 そこからいくつか拾ってくると、以下のとおり。

■イギリスの計画については、4年前の2004年にすでに一報。
●右画
遺伝上の親3人の子を作る計画申請中@英国
2004/10 New Scientist Scientists seek to create 'three-parent' babies

イギリス、ヒトの人工的一夫多妻受精卵による繁殖を認可
2005/09 BBC News Embryo with two mothers approve
母さんが二人の胎児ってナニ
2005/09 BBC News Q&A: Two mother embryo
親三人って、いいのか?
2005/09 BBC News Concern over three-parent embryo

2005/09 時事通信 受精卵核を別女性の卵子に=遺伝疾患防止で実験へ−英大学


■同じ手法は日本でも動物実験がなされてますね。
2005/11 読売新聞 ミトコンドリア病、核移植で阻止 … 筑波大研究グループ
 病気のマウスの受精卵から核を取り出し、あらかじめ核を取り除いておいた別の健康な卵子に移植
2005/11 共同通信 受精卵核移植で病気抑制 筑波大、マウス使い成功


■ミトコンドリアは細胞の元気のモト。
 高齢の女性では、卵子のミトコンドリアが元気不足になっていることがある。
 そういう場合、他人のミトコンドリアではなく、本人のミトコンドリアを本人の卵子にたくさん注入して元気にする、というようなことも行われている。
2004/10 【日本語記事】共同通信  「卵子若返り法」で妊娠 台湾で開発、既に20人誕生
 本人の別の細胞から採取したミトコンドリアを注入
2004/10 New Scientist Babies born after transplant surgery on eggs
 Twenty children have been born
「卵子に手術」をして生まれた子@台湾
2004/10 EurekAlert Babies born after surgery on eggs
2004/10 news@nature.com Egg injection boosts fertility
 New mitochondria may pep up ageing eggs, without creating 'three-parent' babies.


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 なお、ミトコンドリアは、一つの細胞には一つの種類しか存在できません。chitchit
 2人ぶんの(2種類の)ミトコンドリアをいっしょに存在させると、ミトコンドリアどうしが殺しあいを始めるので生きていられなくなります。
 → 『 性が、男と女の2つだけなのは、ミトコンドリアのせい 』
 ミトコンドリアが足りなくて増やしたい場合、ミトコンドリアに不具合があってなんとかしたい場合、別の種類のミトコンドリアをちょっと足せばいい、というわけには行かないのです。
 全く同じ種類のミトコンドリアを調達してくるか、全とっかえするか、しかないわけで。

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 ついでに、ミトコンドリアとは関係ない道筋で、「親三人」どころか「親4人」になってしまったケースも世の中にはありました。

ひとりの父さんと三人の母さんを持つびっくり赤ちゃん、正式に実子として認知される
 双子の相方が卵子を提供し、姉が子宮を貸してくれました
2005/11 BBC News Ruling on baby with three mothers
2005/10 【日本語記事】 UK Today(JAPAN JOURNALS LTD.)
 子供1人に母親が3人! 不妊女性、姉妹からの思わぬ援助で「母親」に

 母さん3人に父さん一人、つまり親4人ですね。 母の日たいへん。tang

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 さらに、ミトコンドリアがらみではない、市井の感覚的にこれぞ「遺伝子組み替え赤ちゃん!」のルートもいくつか置いておきましょう。
 やっているのは日本だったりする。
●右画
日本式、遺伝子挿入の新手法 京都大学・篠原隆司
 レトロウィルスに感染させた精子幹細胞から遺伝子改変ベビーを作る@マウス
 つまり、あなたの精巣とあなたの子孫を改造してしまう伝染病、というしろものも想定可能なわけで
2004/06 EurekAlert Japanese researchers develop novel method of introducing transgenes into animals

生まれる前に遺伝子治療
 胎内遺伝子挿入はネズミで成功しています
2004/03 BBC News Hope for gene transplants in womb

ぼくの精子でもぼくの子じゃない??  精子の遺伝子改変が可能になります
2004/01 BBC News GM sperm 'is possible in humans'

2004/01 EurekAlert Transgenic animals produced using cultured sperm
2004/01 New Scientist Test-tube sperm get new genes
福井県立大の酒井則良助教授ら
2004/01 【日本語記事】共同通信精子に遺伝子組み込み 品種改良・人間応用も

 やりうる。でもまだヒトではやられていない。 のだと思う。

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 さて、ちょっと考えてみてね。

●生まれる前に遺伝子を改変した場合、それはあなたの子ですか?

●自分の睾丸(キンタマ)が、いつのまにか遺伝子治療(自分のものではない遺伝子を注入されること)されていた場合、自分の精子で生まれた子は、あなたの子ですか?

●自分の遺伝子が、「どのくらい入っていれば」自分の子ですか?

●自分の子は、遺伝子だけが基準ですか?

●あなたは、遺伝子にしかアイデンティティがない人間ですか?

 一つ前の記事「遺伝子組み換え蚊」の話を読んだ人にはこうフルのもいいかな。

●遺伝子組み替え赤ちゃんに噛まれたらどう思いますか?crazy

◆左表紙

 『デザイナー・ベビー 生殖技術はどこまで行くのか』
 ロジャー・ゴスデン (著)
 原書房 (2002/01)


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追記:2008/02/11
 いや、すみません、なめてました。achar2

 なぜ、わずか10年ほど前(最初の例は1997年に産まれたらしい)の事例をもってして『昔から』と、「大昔からいる」かのような印象を受けるような記述をしたのか。10年ほど前なら、ごく最近ですよ。昔じゃないだろう。
 なぜ表題に『昔から』を入れたのか。なぜ「以前にも」ですませなかったのか。

 なぜなら、「初の事例」の意味を取り違えてワイアドなどが報じていたから、10年前にあった事例を無視した報道がなされていたから、それはおかしいんじゃないのかと、わざと『こういう事例があったことを抜かしてないか』『昔から』『すでにあるじゃないか』と受け取れる方向の強調記述をした。
 つまりイヤミです。

 ところが、そこらの読み手は「なんだ、たくさんいるのか」とマジ真に受けてくれた。「実はたくさん産まれているんだね」と受け取っている者がいる。あ”−リテラシー効かねぇ。
 10年ほど前の事例で十数例産まれただけなのだが、今回報道された事例との意味合いの区別は全然ついていないらしい。
 いや、あてつけのイヤミで書いた関係で、わざと「意味合いの区別(政府が認可した試験的な事例と、産科が勝手にやったオイタ、という違い)」はうやむやになる方向で書いた。ところが、そこらの読み手は「なんだ、前にも同じことがあったのか」とマジ真に受けてくれる。リテラシー効かねぇー。

 すまんかったです。
 「10年ほど前」と言っても、下手すればそこらの学生の”ものごころつくまえ”だもんな。彼らにとっては大昔だっぽい表現をされても違和感なかったりするんだろう。

・このたびの技術は、すでに十分やりうるのだが、やっていないだけ
・このたびのイギリスの報は、2004年から政府に「倫理問題が起きそうなこんな胚操作はやっていいですか」と打診をして慎重に進められていたもの。まだヒトとして産まれるまでには持って行かれていない。
・2001年の騒ぎのほうは、倫理問題になることをよく把握しないまま、「できることをやって」しまった産科の話。
・2001年の騒ぎ以降も産まれているか否かは定かではない、世界各国の産科が何やってるかわからないし、自粛していっさい行われていないかもしれない、不明。
・2004年の台湾の報は、ミトコンドリアがらみではあっても、核入れ替えにも、遺伝子組み換えにも、当たらないケース。

・・・わかるかなぁ。


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