[ EP: 科学に佇む心と身体 ]

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遺伝子組み換え蚊に刺されると?

カテゴリ[科学に佇む2008年] 2008/02/06
●右画
2008/01 【日本語記事】ワイアードビジョン 蚊を絶滅させるための「遺伝子組み換え蚊」

●早死にする遺伝子組み換えネッタイシマカはいかが
 イギリスのバイオテクノロジー企業、Oxitec社
  リンク Oxitec
●ラセンウジバエなどで使われた「不妊虫放飼法」をアレンジ
 抗生物質テトラサイクリンを与えなければ死ぬように、蚊の遺伝子を組み替える
 これらの蚊は遺伝子的には死者同然だが、飼育下では解毒剤で延命しておける
×自然界にあるテトラサイクリンを摂取してしまう可能性は
●殺虫剤不要だし、疫病減らせるし
●最新のテスト結果:遺伝子組み換え蚊は野生の蚊と同じように繁殖できる
 野生蚊のメス最大50%が、Oxitec社の遺伝子組み換えオスと交配した
●順調に行けば、3年後にマレーシアで遺伝子組み換え蚊を大規模に放す計画
×万が一何かあった場合の始末方法が何もない
●同社はミバエ、ワタキバガ幼虫、コドリンガの遺伝子組み換えにもチャレンジ中
 数百万ドルのベンチャー投資も受けている


■ラセンウジバエ
  「ラセンウジバエ解決法」のように、ぜひ人間にも応用なされた図を夢見て楽しみましょう。w

 ということで、旧聞のニュースだけれど、それにかこつけてぼちぼち関連記事並べ。

■遺伝子組み換え蚊では、マラリア対策のハマダラカと、デング熱対策のネッタイシマカに関するものの2つの流れがあるようです。

■デング熱対策としては、上記の「早死に」計画のほかに、「病気を媒介しにくい蚊」を増やすという路線で進められているものもあります。

遺伝子工学した蚊は、デング熱ウイルスに抵抗あり
2006/03 EurekAlert Genetically engineered mosquitoes show resistance to dengue fever virus

【podcast 音声】科学なポッドキャスト:Inoculating Mosquitos 【英語】MP3ファイル 1分半
2006/03 Living on Earth デング熱に耐性を持つ遺伝子組み換えの蚊


... 以下つづき...

〓〓〓 EP 〓〓〓

■マラリア対策でもいろいろトライが重ねられている
 まずはマラリアを運ばない蚊を作る方向
●右画
遺伝子を組み換えた蚊でマラリアを撲滅しよう
2002/05 BBC News GM mosquitoes offer malaria hope
マラリア原虫の伝播を抑えるトランスジェニック・ハマダラカ
2002/05 Nature 417, 452 - 455 Transgenic anopheline mosquitoes impaired in transmission of a malaria parasite
2002/05 【日本語サイト】農業情報研究所(WAPIC)  米国:マラリア伝播を防ぐ遺伝子組み換え蚊
2002/05 EurekAlert! 'Nature' report: Researchers genetically alter mosquitoes to impair malaria transmission
2002/05 Newsday.com Genetic Blockade for Malaria

マラリアを媒介できない遺伝子組み換え蚊
2004/04 University of California Making a Friendlier Mosquito
 Genetically modified mosquitoes that cannot transmit malaria

2007/03 cnn.co.jp  遺伝子組み換えで「マラリア耐性の蚊」を開発 米研究者
実験室における「マラリア原虫あり」条件では、耐性蚊は耐性のない個体より生存率高い
2007/03 news@nature.com Anti-malaria mosquitoes prove extra fit
 Insects bred to fight disease outlive natural breeds.
2007/03 BBC News GM mosquito 'could fight malaria'


■「不妊虫放飼法」的なマラリア対策遺伝子組み換え蚊の可能性も流れていた。
 つまり「病気を運ばない蚊」ではなく、「繁殖しづらい蚊」。
ハエでできたように、遺伝子組み換え蚊でハマダラカに自滅遺伝子を広められないか
2001/11 BBC News GM mosquito bid to tackle malaria

『意地の悪い』遺伝子操作は、マラリアと戦う可能性があった
2007/03 New Scientist 'Spiteful' gene manipulation could combat malaria
2007/03 【日本語記事】Science日本版 マラリア抵抗性の蚊を広める方法 How Malaria-Resistant Mosquitoes Might Spread
・利己的遺伝子である「Medea」を利用。
・母親からこの遺伝子を受け継いでいない子孫はすべて死亡する


■蚊の鼻をダメにしてしまうといいんじゃないか、というアイデアもあった
蚊の嗅覚遺伝子をいじろうよ
 遺伝子組み換え蚊で蚊を駆除できるか
2001/11 Vanderbilt University Assaulting the mosquito's sense of smell


■バイオ屋さんは、ラボ(研究室内)でやれるアイデアには夢中になるけれど、現場(金策や生態)で何が起きるかについてはあまりわかっていなかったりするので、いろいろな横槍が入ってきたりする。
遺伝子組み換え蚊でマラリア撲滅はちょっと無理
 そうとうな資金援助がないととうてい…
2003/02 Nature Science Update  Transgenic mosquitoes unfit for duty
 Malaria-resistant insects must be bred for success
2003/03 【日本語記事】ネイチャーバイオニュース 遺伝子組み換え蚊でマラリアを防ぐ  野生の蚊に圧倒され計画倒れ


■冒頭のワイアドの記事で「最新のテスト結果:遺伝子組み換え蚊は野生の蚊と同じように繁殖できる」と述べてあるのは、4年前など「そんなの殖えないじゃん」という指摘がけっこうあったから。
遺伝子組み替えのネッタイシマカは非組み替えの蚊より繁殖力が劣る
2004/01 University of California  Transgenic Mosquitoes are Less Fertile Than Their Counterparts in Nature


■そういえば、「人工飼育の個体は野生では負けちゃう」という話には、だいぶ様相は違うけれど先月こういうのもあったし。
人工飼育した肉食獣を環境に再導入しても、その3分の2は不適応をおこして死んでしまう
 だいたいがこれ、人間のせいなのであって
2008/01 EurekAlert Captive carnivores not up to wild living
おおかたの虜生まれの捕食動物は、野生にはなつと死ぬ
2008/01 National Geographic Most Captive-Born Predators Die If Released


〓〓〓 EP 〓〓〓

 さて、冒頭の記事では「順調に行けば3年後にマレーシアで遺伝子組み換え蚊を大規模に放す計画」だそうです。

 実行にこぎ着けるかどうかはともかく、
 遺伝子組み換えの蚊に刺される、という図はどうなんだろう?
 遺伝子組み換えのネコにひっかかれたら?
 遺伝子組み換えの犬に噛まれたら?

 デング熱で死ぬのと、遺伝子組み換えの蚊に刺されるのと、どちらが恐ろしいのか。

 古来からある疫病の場合、その疫病で死ぬことに対して、土着の正当化理論が培(つちか)われていることがある。日々の意味世界を壊さない、意味のおさめ方。病にかかる理由、つきあい方、別れ方、理解の仕方。
 日々の意味世界を壊すもの(特に意味の枠を無視するようなアノマリー非日常なもの)が入ってきた場合、意味の撹乱(かくらん)がおき、安心が壊される。不安や穢(けが)れ観が怒涛に沸いてきたりする。そういう保守的な反応をしたほうが安全だった展開が、ヒトという種の過去にたくさんあったのだろう。

 ヒトは、実際の危険を避けるより、「危険な感じ」を避ける錯誤の中で日々生きている。そのほうが、「安心で幸せ」だからだ。ヒトが求める幸福とは、そんなもんなのだ。

 でもって、所変われば意味変わる、アメリカではね、日本とは違って「遺伝子組み換えやDNAの突然変異ですばらしいミュータントになれる」という妄想が普通にのさばっていたりするわけで。(ファンタスティック・フォーやスパイダーマン、ハルク) プルトニウムを呑むという人体実験に喜んで参加する人がたくさんいたというお国柄だし。

 実際のところ、「ヨーロッパの疫病対策のためにフランスで遺伝子組み換え蚊を大規模に放す」のと、「中南米の疫病対策のためにメキシコで遺伝子組み換え蚊を大規模に放す」のと、「東南アジアの疫病対策のためにマレーシアで遺伝子組み換え蚊を大規模に放す」のとで、なんぼか感じる抵抗感が違うとしたら、それはまずいかもしれないんだよな。


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1646 #u7fe12ZE コメントアンカー かおる さんのコメント 【2008/02/06】 URL [編集]

心配しすぎかもしれませんが、予測出来ない事は起きないのでしょうか?

1005 #MJWiGxv6 コメントアンカー 雨崎 さんのコメント 【2008/02/08】 URL [編集]

その問いかけは大変回答しづらいのです、たいへん異なる角度からの質問になりますので、そのすりあわせをするのが・・・云々

0148 #2veXWRss コメントアンカー Cru さんのコメント 【2008/02/10】 URL [編集]

DDTを全面禁止したのも錯誤なんでしょうねぇ。
いや、野生生物を救ったんだから良いか。
それで何万人死んでも、「安心」なのが吉だと思いますね。
病気が文化に組み入れられているのであれば。
もっといい対処方法がみつかるかもしれないし。
うむむ。

ちなみに、私自身は遺伝子組み換えへの拒否感はあまりありません。DDTを分泌するような組み換えでない限り。

0221 #cKjIa1.Y コメントアンカー amasaki さんのコメント 【2008/02/10】 URL [編集]

 遺伝子と心はベツモノだとは思っていませんか?
 「遺伝子組み換え」が指す手法や結果にはピンキリいろいろあります。
 遺伝子の組み換えが心に影響する、という情報があるとした場合でも、拒否感は生じずにすみますか?

2355 #2veXWRss コメントアンカー Cru さんのコメント 【2008/02/10】 URL [編集]

それで何万人死んでも、「安心」なのが吉だと思いますね。>
これ、私は、わりと本気で書いてます。

遺伝子と心はベツモノだとは思っていませんか?>
心身二元論の事ですか?
人間の形成に遺伝子が大きく関与している以上、無関係なはずはないですね。
このエントリでは文化について触れられているのかと思ってましたが。
ある文化的背景で、遺伝子の組み換えが心に影響するのだから、”「安心」なのが吉”とは、単純に統計的な推計を元に是非は云々できないと言う意味です。

あと、人間に対する遺伝子操作に関しては、今は議論するのもナンセンスだと考えています。
わかっていないことが大きすぎる。

そう言う意味では、他の生物に対する操作も危険ですが、抗生物質依存のような操作が問題になる理由がちょっと想像つきかるというのが正直なところです。

※ウリミバエの不妊操作も危険だったかもしれないですね。想像力の貧困のせいで沖縄でおこなわれてしまったわけですが。悪影響が出ていないのは僥倖でした。

0000 #cKjIa1.Y コメントアンカー amasaki さんのコメント 【2008/02/11】 URL [編集]

いや、トップダウンではなく「Cru氏自身に遺伝子組み換えをほどこすことに対する拒否感はどうですか」という意味です

2129 #2veXWRss コメントアンカー Cru さんのコメント 【2008/02/11】 URL [編集]

私自身に遺伝子組み換えをほどこすとは、
遺伝子治療の事でしょうか?
それとも、デザイナーベビーのこと?

前者に関しては、たとえば将来パーキンソン病になってベクターを導入してほしいかとか、そういうことでしょうか。
単純に、ウィルスに感染するのは嫌ですね。
予後についてもっとも望ましいと説明されるなら考えるかもしれません。セカンドオピニオンが欲しいとは思うでしょう。
自己同一性の危機については、体験がないのでなんともいえません。
そういった症例があるのでしょうか?

後者に関しては、既に書きました。
ナンセンス。
先に書いた「遺伝子組み換えへの拒否感はあまりありません」というのは、遺伝子組み換え作物などの事です。

どうも御質問の意図をはかりかねます。

0002 #waZax/U2 コメントアンカー あまさき さんのコメント 【2008/02/12】 URL [編集]

うむ、意図を測りかねるのはお互い様ではあろうと思われ。
Cruさんはあまさきの書き物を読んでいなさるわけだが、あまさきの側はCruさんが誰か存じない。コメントの背景も知る由もない。
あまさきのほうは、次のミトコンドリア改変ベビーや羊水騒ぎに頭が移ってしまっていたので、その頭でコメント欄に書かれた文言に反応するとこうなってしまい、食い違いに至ったというわけなのである。
「私自身は」という文言が迷路の入口であったのだった。

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