2008/01 【日本語記事】ワイアードビジョン 蚊を絶滅させるための「遺伝子組み換え蚊」
●早死にする遺伝子組み換えネッタイシマカはいかが
イギリスのバイオテクノロジー企業、Oxitec社
Oxitec
●ラセンウジバエなどで使われた「不妊虫放飼法」をアレンジ
抗生物質テトラサイクリンを与えなければ死ぬように、蚊の遺伝子を組み替える
これらの蚊は遺伝子的には死者同然だが、飼育下では解毒剤で延命しておける
×自然界にあるテトラサイクリンを摂取してしまう可能性は
●殺虫剤不要だし、疫病減らせるし
●最新のテスト結果:遺伝子組み換え蚊は野生の蚊と同じように繁殖できる
野生蚊のメス最大50%が、Oxitec社の遺伝子組み換えオスと交配した
●順調に行けば、3年後にマレーシアで遺伝子組み換え蚊を大規模に放す計画
×万が一何かあった場合の始末方法が何もない
●同社はミバエ、ワタキバガ幼虫、コドリンガの遺伝子組み換えにもチャレンジ中
数百万ドルのベンチャー投資も受けている
「ラセンウジバエ解決法」のように、ぜひ人間にも応用なされた図を夢見て楽しみましょう。w
ということで、旧聞のニュースだけれど、それにかこつけてぼちぼち関連記事並べ。
■遺伝子組み換え蚊では、マラリア対策のハマダラカと、デング熱対策のネッタイシマカに関するものの2つの流れがあるようです。
■デング熱対策としては、上記の「早死に」計画のほかに、「病気を媒介しにくい蚊」を増やすという路線で進められているものもあります。
遺伝子工学した蚊は、デング熱ウイルスに抵抗あり
2006/03 EurekAlert Genetically engineered mosquitoes show resistance to dengue fever virus科学なポッドキャスト:Inoculating Mosquitos
MP3ファイル 1分半
2006/03 Living on Earth デング熱に耐性を持つ遺伝子組み換えの蚊
... 以下つづき...

まずはマラリアを運ばない蚊を作る方向
遺伝子を組み換えた蚊でマラリアを撲滅しよう
2002/05 BBC News GM mosquitoes offer malaria hope
マラリア原虫の伝播を抑えるトランスジェニック・ハマダラカ
2002/05 Nature 417, 452 - 455 Transgenic anopheline mosquitoes impaired in transmission of a malaria parasite
2002/05 【日本語サイト】農業情報研究所(WAPIC) 米国:マラリア伝播を防ぐ遺伝子組み換え蚊
2002/05 EurekAlert! 'Nature' report: Researchers genetically alter mosquitoes to impair malaria transmission
2002/05 Newsday.com Genetic Blockade for Malaria
マラリアを媒介できない遺伝子組み換え蚊
2004/04 University of California Making a Friendlier Mosquito
Genetically modified mosquitoes that cannot transmit malaria
2007/03 cnn.co.jp 遺伝子組み換えで「マラリア耐性の蚊」を開発 米研究者
実験室における「マラリア原虫あり」条件では、耐性蚊は耐性のない個体より生存率高い
2007/03 news@nature.com Anti-malaria mosquitoes prove extra fit
Insects bred to fight disease outlive natural breeds.
2007/03 BBC News GM mosquito 'could fight malaria'
■「不妊虫放飼法」的なマラリア対策遺伝子組み換え蚊の可能性も流れていた。
つまり「病気を運ばない蚊」ではなく、「繁殖しづらい蚊」。
ハエでできたように、遺伝子組み換え蚊でハマダラカに自滅遺伝子を広められないか
2001/11 BBC News GM mosquito bid to tackle malaria
『意地の悪い』遺伝子操作は、マラリアと戦う可能性があった
2007/03 New Scientist 'Spiteful' gene manipulation could combat malaria
2007/03 【日本語記事】Science日本版 マラリア抵抗性の蚊を広める方法 How Malaria-Resistant Mosquitoes Might Spread
・利己的遺伝子である「Medea」を利用。
・母親からこの遺伝子を受け継いでいない子孫はすべて死亡する
■蚊の鼻をダメにしてしまうといいんじゃないか、というアイデアもあった
蚊の嗅覚遺伝子をいじろうよ
遺伝子組み換え蚊で蚊を駆除できるか
2001/11 Vanderbilt University Assaulting the mosquito's sense of smell
■バイオ屋さんは、ラボ(研究室内)でやれるアイデアには夢中になるけれど、現場(金策や生態)で何が起きるかについてはあまりわかっていなかったりするので、いろいろな横槍が入ってきたりする。
遺伝子組み換え蚊でマラリア撲滅はちょっと無理
そうとうな資金援助がないととうてい…
2003/02 Nature Science Update Transgenic mosquitoes unfit for duty
Malaria-resistant insects must be bred for success
2003/03 【日本語記事】ネイチャーバイオニュース 遺伝子組み換え蚊でマラリアを防ぐ 野生の蚊に圧倒され計画倒れ
■冒頭のワイアドの記事で「最新のテスト結果:遺伝子組み換え蚊は野生の蚊と同じように繁殖できる」と述べてあるのは、4年前など「そんなの殖えないじゃん」という指摘がけっこうあったから。
遺伝子組み替えのネッタイシマカは非組み替えの蚊より繁殖力が劣る
2004/01 University of California Transgenic Mosquitoes are Less Fertile Than Their Counterparts in Nature
■そういえば、「人工飼育の個体は野生では負けちゃう」という話には、だいぶ様相は違うけれど先月こういうのもあったし。
人工飼育した肉食獣を環境に再導入しても、その3分の2は不適応をおこして死んでしまう
だいたいがこれ、人間のせいなのであって
2008/01 EurekAlert Captive carnivores not up to wild living
おおかたの虜生まれの捕食動物は、野生にはなつと死ぬ
2008/01 National Geographic Most Captive-Born Predators Die If Released

さて、冒頭の記事では「順調に行けば3年後にマレーシアで遺伝子組み換え蚊を大規模に放す計画」だそうです。
実行にこぎ着けるかどうかはともかく、
遺伝子組み換えの蚊に刺される、という図はどうなんだろう?
遺伝子組み換えのネコにひっかかれたら?
遺伝子組み換えの犬に噛まれたら?
デング熱で死ぬのと、遺伝子組み換えの蚊に刺されるのと、どちらが恐ろしいのか。
古来からある疫病の場合、その疫病で死ぬことに対して、土着の正当化理論が培(つちか)われていることがある。日々の意味世界を壊さない、意味のおさめ方。病にかかる理由、つきあい方、別れ方、理解の仕方。
日々の意味世界を壊すもの(特に意味の枠を無視するようなアノマリー非日常なもの)が入ってきた場合、意味の撹乱(かくらん)がおき、安心が壊される。不安や穢(けが)れ観が怒涛に沸いてきたりする。そういう保守的な反応をしたほうが安全だった展開が、ヒトという種の過去にたくさんあったのだろう。
ヒトは、実際の危険を避けるより、「危険な感じ」を避ける錯誤の中で日々生きている。そのほうが、「安心で幸せ」だからだ。ヒトが求める幸福とは、そんなもんなのだ。
でもって、所変われば意味変わる、アメリカではね、日本とは違って「遺伝子組み換えやDNAの突然変異ですばらしいミュータントになれる」という妄想が普通にのさばっていたりするわけで。(ファンタスティック・フォーやスパイダーマン、ハルク) プルトニウムを呑むという人体実験に喜んで参加する人がたくさんいたというお国柄だし。
実際のところ、「ヨーロッパの疫病対策のためにフランスで遺伝子組み換え蚊を大規模に放す」のと、「中南米の疫病対策のためにメキシコで遺伝子組み換え蚊を大規模に放す」のと、「東南アジアの疫病対策のためにマレーシアで遺伝子組み換え蚊を大規模に放す」のとで、なんぼか感じる抵抗感が違うとしたら、それはまずいかもしれないんだよな。

![[ EP: 科学に佇む心と身体 ]](http://homepage1.nifty.com/NewSphere/transparent.gif)







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