[ EP: 科学に佇む心と身体 ]

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大丸札幌にサッポロカイギュウがいるよ

カテゴリ[科学に佇む2008年] 2008/01/20
 → 2007年10月『 古代ジュゴン:サッポロカイギュウのカケラを物語れ 』
 これで紹介したサッポロカイギュウのばかでかい復元化石が、いま札幌駅にころがっています。

 リンク 札幌市博物館活動センター、大丸札幌店 冬休み共同企画
 「札幌はむかし海だった!」展
 札幌駅の大丸1階にサッポロカイギュウ(復元模型、体長7m)を展示します。
 6階には札幌から発見されたクジラや魚類の化石の実物標本も展示。
 冬休みの旅行は、820万年前の海だった頃の札幌へ。

期間:2008年 1月16日(水)〜1月22日(火) 10時〜20時
場所:大丸札幌店 1階通路と6階(JR札幌駅1階、地下街直結)
入場無料


 去年はこのサッポロカイギュウくん、札幌市役所の一階や、北大のクラーク会館など、いろいろな場所でころがっていたし。ase

挿画


 忙しさにかまけて書けずに放置していたけれど、去年の暮れ、札幌市が発行したサッポロカイギュウがらみの報告書にも目を通したんだ。なんか今月22日に札幌駅のサッポロカイギュウ展示が終わってしまうらしいので、それにかこつけてなんとか慌ててその本の話を書こうかなと。

(すごい面白い本や事件をゲットしても書ききる時間がないよ、待たせている人ごめん)

●本 『札幌市大型動物化石総合調査報告書 サッポロカイギュウとその時代の解明』
 札幌市博物館活動センター編集 平成19年3月 札幌市発行


 この本はアマゾンでは売ってません。

... 以下つづき...

〓〓〓 EP 〓〓〓

 普通の場所では売っていないけれど、さすがに「札幌市発行」、札幌の図書館にはあるのだった(郷土資料コーナー)。
 ヨソの地方でも、図書館経由ではるばる取り寄せて読むことはできるかもしれない。

 札幌市内の河原で、突然巨大な哺乳類の化石が見つかった!
 これはたいへんなことではございませんか!
 札幌市から3年間、集中して研究費が出たぞ! さあみんなで研究だ!

 その3年間の集大成が、この報告書であるらしい。
 カイギュウはどんなしてみつかったのか。化石はいくつ見つかったのか。
 どのくらい予算が出たのか。その予算で何をやったのか。
 市民参加の発掘イベントやら、巨大復元模型の作製やら。
 ほか、サッポロカイギュウをメインの軸にして、カイギュウ以外の各種化石の報告、珪藻・放散虫・花粉など微化石のそれぞれ担当による報告、地質解析の経緯や、札幌の地形の成り立ち・・・
筆者(ABC順)
赤松守雄(日本第四紀学会博物館関係委員)
青柳大介(北海道教育大学札幌校)
古沢仁(札幌市博物館活動センター)
五十嵐八枝子(北方圏古環境研究室)
板木拓也(釜山大学)
垣原康之(北海道立地質研究所)
木村方一(北海道教育大学)
松枝大治(北海道大学)
三浦龍一(札幌市博物館活動センター)
中川充((独)産業技術総合研究所)
奈良正和(愛媛大学)
能條歩(北海道教育大学岩見沢校)
大平寛人(島根大学)
岡孝雄(北海道立地質研究所)
岡田尚武(北海道大学)
岡村聡(北海道教育大学札幌校)
嵯峨山積(北海道立地質研究所)
重野聖之(明治コンサルタント(株))
篠原暁(沼田町化石館)
鈴木明彦(北海道教育大学岩見沢校)
高清水康博(北海道立地質研究所)
冨田雄介(前:北海道教育大学岩見沢校)

 こんなにいろんな人たちがさまざまなレポートを寄せてくれている。
 北海道の化石研究!が見える感じだ。

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●毎年1000万円

「初年度となった平成16年度は、厳しい財政状況の中から臨時事業として予算1080万円の事業費が計上された。」
「平成17年度は予算990万円の事業費が計上された。」
「平成18年度は3年間に亘る調査をまとめ、その成果と今後に残された課題を明らかにし総合調査報告書にまとめる年度にあたり、予算940万円の事業費が計上された。」

 へぇ〜。
 市営の博物館もない状態なのに、この3年間だけはドカンと「化石研究」に市の予算がもらえたわけだ。
 この毎年1000万円という金額が、資金的に潤沢なのか適正なのか、よくはわからないけれど、異例にありがたいことであるには違いない。

 そも、札幌市には市営の博物館はありません。博物館未満の「博物館準備センター」はあるけれど、準備センターのまんま、もう長いことくすぶっている。サッポロカイギュウの専門家さんは、その「博物館準備センター」の職員さん。
 そんなこんなの話は前にも書いたんだっけ。
 → 2006年8月 『 札幌には博物館がないんです 』
 → 2007年10月『 古代ジュゴン:サッポロカイギュウのカケラを物語れ 』

 予算をもらえた3年間。
 初年度に計画されたのは
  ・調査の方向性を検討するための検討会の設置
  ・周囲の発掘調査を市民参加で実施
  ・周辺の地質踏査、産出層準の年代や堆積環境の調査・分析
  ・市民見学会、市民公開型の成果報告会
  ・調査の映像記録化、採取資料の整理・調査・研究
  ・市民ボランティアを育成する養成講座
  ・調査速報展
盛りだくさんだ。ここで「この札幌市内初の脊椎動物化石は800万年前のものだ!」と判明したんだそうな。
 2年目は、
  ・カイギュウの学術的研究
  ・市民参加の生痕化石調査及び鯨類化石採取箇所の調査
  ・地層の年代と堆積環境に係る調査・分析
  ・カイギュウの骨格標本の作製
  ・豊平川周辺の山地形成の調査
  ・市民見学会、市民公開型の調査報告会
  ・調査の映像記録化
  ・調査速報展
この年は「世界最古のヒドロダマリス属!」と判明して「サッポロカイギュウ!」と命名して、マスコミにも取りあげられて盛り上がったんだそうな。
 最後の年は、
  ・カイギュウの学術的研究
  ・地層の年代と堆積環境に係る調査・分析
  ・1次資料としての骨格標本の作製
  ・豊平川周辺の山地形成に係る調査
  ・各種補足調査、市民見学会、市民公開型の成果報告会
  ・調査の映像記録化、調査速報展
  ・調査報告書の作成、収集資料の体系的整理など

 サッポロカイギュウの巨大模型は、やたらチカラワザで作られたという話も前に書いた。
 → 2007年10月『 古代ジュゴン:サッポロカイギュウのカケラを物語れ 』

〓〓〓 EP 〓〓〓

●面白かったこと:その1

 サッポロカイギュウの巨大骨格模型作成の経緯が収録されているのだけれど、その報告の末尾に
p.145
 しかし、このサッポロカイギュウ復元骨格が、どのような形で展示・活用されるのか、現段階では詳細ははっきりしていないようなので、1日も早く多くの札幌市民および来訪者の目に触れることができるような展示場所が決まることを、製作者として切望する次第である。
(篠原暁)

 ええええええ。 (;゚д゚)
 どこに展示されるかアテも見えないまま「とにかく作りはしました」だったのか。
 予算消化?
 巨大骨格模型にはどのくらいのお金がかかったんだろうね。
 年間予算1000万円の中から捻出するわけだから、そんなに大枚ははたけない。予算消化以前にけっこうお安く作るハメになったのかもしれない。

 その後、平成19年度は市役所に北海道大学、今年は札幌大丸と、それなりに活用してもらえているね。制作者さんは安心しているかな。

挿画
2007年北大での展示 ほかのカイギュウと並んでます


●面白かったこと:その2

 最初に見つかった「サッポロカイギュウ札幌第1標本」とは別に、近辺から別個体のサッポロカイギュウ化石がいくつか見つかったが、それらはいずれも「転石」だったんだそうな。
 「転石」。
 川の中に転がっていた石の中から、これは化石だ!と選り分けたんだ。化石が、掘らなくてもデフォルトで転がっている。ヤバス。

●市民参加
2004年の現地調査において、サッポロカイギュウの骨片が含まれると考えられる土砂を集め土嚢袋およそ30袋が札幌市博物館活動センターに搬入され、希望する市民などによって随時水洗いによるクリーニング作業が行われている。これまでに作業に参加し、サッポロカイギュウの骨片を当センターに寄贈された方は、2004年度が83名、2005年度が8名、2006年度が83名で、2007年2月末現在、合計でのべ179名の市民に参加していただいている。

 「骨片が含まれると考えられる土砂」を土嚢で大量に運び込んで、市民と寄ってたかって「これ化石ちゃうんちゃう」イベントがあったのか! うらやま。
 「転石状態の化石」は現地で直に拾ったわけではなく、持ち帰った土嚢の中から選り分けでゲットしたのかな。

●不思議なこと

 年代の割り出しや、棲息環境の推測のために、どんな微細な化石が伴っているのかを分析するのだけれど、一口に微小化石といっても、珪藻や放散虫、花粉、それぞれに専門担当者が違うんだなぁと。
 それぞれに、それぞれの解析担当者が報告をあげている。
 「微小化石解析の一括外注先」みたいなもんはないのかな。微細化石解析はまだ発展途上?
 地質屋さんといっしょにはできないのか。

●残念なこと

 写真。図版。なんで全部白黒なのか。
 いや、カラー印刷抜きの簡素な報告書だから、図版は白黒でも仕方がないのだけれど、その白黒さが残念で仕方がない原因は「カラーでないと意味がない図版までもが白黒で印刷されてしまっている」からだ。ピンクとオレンジに色分けしてある図解を白黒で印刷してどないすんねやと。
 せめて、その白黒図版の横に「この図版のカラー版はこちらのURLで閲覧できます」とウェブの紹介を付記しておくようなことはできなかったのかな。載せたほうも残念だったろうに。(原稿を依頼された側は白黒印刷になるとは聞かされていなかった?)

●この先は?

 これだけのメンバー、地元の研究者模様。
 カイギュウをめぐる各人各様のつながりや人間模様が立体的に見えたら面白いだろうなぁ、と思うけれど、報告書にそこまで期待してもしょうがないかな。
 誰かこのへんに目をつけて、本を一冊書いてしまえるかもしれない。
  → 『 2000年有珠山噴火 』 の記録がたいへん面白かった。そんな延長で、サッポロカイギュウをめぐる人間模様もドラマタイズの材料としてたいへんおいしそうに見える。

●●●●●

 札幌市のサッポロカイギュウ盛り上がりは、予算が出た3年のみの、つかのまの祭だったのかな。
 去年と今年は、祭のあとのサッポロカイギュウ骨格模型というおみこしが、おりおり挨拶回りに巡回しているみたいなもんなのかな。
 予算が切れたら、サッポロカイギュウのその後の展開はあまり期待できなくなるのかな。

 アマゾンでは手に入らない本、
●本 『札幌市大型動物化石総合調査報告書 サッポロカイギュウとその時代の解明』
 札幌市博物館活動センター編集 平成19年3月 札幌市発行


 大判で、薄手。
 表題どおり、内容は報告書に近い感じで、素人さんが読むにはつらいかもしれない記述内容ではあるのです。でもそのぶんナマさが楽しめる。現場のつたなさも透け見える。

 「札幌の地史を解明する関心を高め、郷土のなりたちを明らかにする喜びを市民に与えてくれたことにある。」そのサッポロカイギュウ研究の3年間、その成果がまとまった一冊でございます。

去年出た札幌の地形のご本にも、サッポロカイギュウは登場しています。
 『歩こう!札幌の地形と地質』 前田寿嗣 北海道新聞社 (2007/05) p.92 「小金湯●カイギュウのふるさと」
 → 『 札幌の地形と地質はこんななってるよ 』

 今、2008年1月22日まで、札幌駅降りたらすぐデーンとサッポロカイギュウが転がっております。
 見かけたら、記念写真撮ってやっておくんなまし。

〓〓〓 EP 〓〓〓

日本でカイギュウの化石が見つかり始めたのはまだごく最近のこと。
近頃は見つかる数も地方も増えてきている。
2007/12 【日本語記事】産経新聞 海牛化石の愛称は「ミョウシー」 新潟・長岡市
 http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20071220-00000026-san-l15
200〜250万年前のものとしては国内初の出土例


恐竜の化石も出土頻度が増えている。
2008/01 【日本語記事】朝日新聞 恐竜発掘ラッシュ 化石発見、都道府県の3分の1に
http://www.asahi.com/science/update/0103/OSK200801020056.html

かつて恐竜化石は見つからないとまでいわれていた日本国内で、初めて化石が発見されて今年で30年。
恐竜とはあまり縁がなかった各地で貴重な発見が相次ぎ、恐竜化石が見つかった都道府県は全国の3分の1を超えた。


 30年前までは、恐竜化石がみつかってなかった日本。
 わずか20年前から、見つかり始めたカイギュウ化石。
 ウン億年、ウン百万年眠っていた化石を、全然発見できていなかった日本人。
 まだまだそこらじゅうに古代の亡骸と夢はゴロゴロしていそうじゃございませんか。




メタル

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筆者:雨崎良未
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