[ EP: 科学に佇む心と身体 ]

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映画「アポカリプト」が行ったマヤ文明破壊

カテゴリ[科学に佇む2006年] 2006/12/14
12月10日に一報を出したこのエントリ(→ 『今日の科学メモ:アポカリプトとマヤ文明崩壊』 )、なにやら事態は深刻なようなので、改稿あげます。

『アポカリプト』についてのエントリ:
 1:発端 2006/12→ 『今日の科学メモ:アポカリプトとマヤ文明崩壊』
    (アポカリプトはジャレド・ダイヤモンドに影響を受けている)
 2:本編 2007/01→ 『映画「アポカリプト」が行ったマヤ文明破壊』
    (アポカリプトはマヤの歴史をねじまげている)
 3:駄目押し 2007/01→ 『アポカリプト発、マヤ文明経由、アリス・シェルドン行き』
    (アポカリプトは人種差別映画である)
 4:マヤ文明の書籍資料 2007/01→ 『マヤ〜メキシコ〜グアテマラ今昔を読む』  (マヤの本当の姿とは)
■古代マヤ文明 ■図説 古代マヤ文明 ■マヤ学を学ぶ人のために ■メキシコを知るための60章■グアテマラを知るための65章 ■グアテマラ虐殺の記憶

メル・ギブソンの新作映画『アポカリプト』、
メルの前作同様(?)、一部で大顰蹙(だいひんしゅく)
 【白人来襲前のマヤ世界を、マヤ語と現地民で描いた大作】

●リアルに再現したと喧伝しながら(史実にない)残虐行為でマヤ文化を汚しまくる
●マヤ帝国の没落は西欧とは無関係な経緯だったのに、わざわざ時代をねじ曲げて、堕落したマヤ人は敬虔なスペイン人(キリスト教徒)に征服され潰えたのだとこじつけていく

★マヤ人は大勢現存しているが、現状はものすごい虐げられている。
★しかも、ついこないだまでキリスト教徒がマヤ人を何十万人も惨殺しまくっていた。
★そんな厳しい状況にある彼らの、かつての先祖までをも謂われのないウソッパチで踏みにじる気か。

cover
『アポカリプト』

出演: ルディ・ヤングブラッド
販売元: ポニーキャニオン
DVD発売日: 2007/11/21
時間: 138 分

『パッション』のメル・ギブソンが放つサバイバルアクション。
R-15作品。グロシーンに注意。 .


◆表紙
Apocalypto [Music from the Motion Picture][映画のサントラ] CD (2006/12/5)


でたらめすぎて、学生といっしょに笑うっきゃなかったよ 〜歴史学者
2006/1213 Boston.com Historian doesn't buy 'Apocalypto'
 歴史家は、『アポカリプト』を買わない
 マヤ世界に狩猟採集民はありえない
スペイン人が見たマヤ世界は、牧歌的な狩猟採集民と血に飢えた大量虐殺者たちだったという、ダブルウソ!
2006/1211 San Francisco Chronicle 'Apocalypto' does disservice to its subjects
 「キングコング」や「パイレーツ・オブ・カリビアン」の悪質なバリエーションだ
ギブソンのアポカリプトは想像以上にひどい
 ●ネット2006/1211 Gibson's new Apocalypto worse than I could have imagined Flores_Man : Messages
 ・キャスト全員マヤ人と宣伝しながら、メインの4人はちゃうんちゃう。
 ・偏見と傲慢な無神経さは「インディアンとカウボーイ」映画レベルだ。

  なんとなくヤノマミスキャンダル祭を思い出す。→ 『アマゾンのヤノマミ族がたくさん死んだのは学者のせい?』

●●●小玉7●●●

 ハリウッドが、マヤ世界を描いたのは初なのかな。
 要するに、この映画のひどさがどんな状態なのか、日本だったら、と置き換えて考えてみるとわかりやすいか。

●映画自体はいつの時代のことかは特定していないが、おそらく江戸時代末期がモデル。

●お江戸の近くの密林(!)に住む狩猟暮らしの原始的な主人公。

●幕府の人間が奴隷狩りに来たぞ! ハラキリのイケニエを集めてるんだ!●右画

●これまでお江戸やお役人のことなど聞いたこともなかった主人公!

●野蛮なお江戸の人間はみんな豪華な裃(かみしも)と十二単(じゅうにひとえ)を着ているよ!

●お江戸の街はものすごい退廃的に堕落した人々でいっぱいだ!

●源氏物語絵巻に、残虐なハラキリ儀式のシーンが加筆されているぞ!

●お江戸の町中では非情な奴隷売買が行われているよ!

●ハラキリ儀式の舞台は古墳の上だ! 一度に数百人もハラキリさせられるよ!!!

●ハラキリの死体は、町人たちが八つ裂きにして楽しむんだよ!

●そんな野蛮なお江戸の日本人を救うのは、ほかならぬ我らが黒船のキリスト教徒たちだ!

●映画のウリは『キャストは全員日本人だ!』
 でも実際には、メインキャストの日本人役は中国人や北米インディアンで、全然日本人には見えないよ。

●映画のウリは『キャストは全員日本語をしゃべる!』
 でも実際には、セリフがある役にはネイティブスピーカーは一人もいないので、ぐだぐだな日本語だらけだよ。


 これが、全世界に公開されるわけだ。
 「日本ってどんな国か知らなかった」人達もご覧になる。
2006/12 Salt Lake Tribune/Los Angeles Times Scholars say accuracy is first casualty of 'Apocalypto'
何百万人もの観衆が、はじめてこの映画でマヤのことを学ぶことになると想像してごらん!!
 「アポカリプト」が描くマヤは、汚い下水と奴隷制度、落ちぶれつつある社会に暮らす、
 下品な踊りと流血ざたにかまけるチョー残酷でサド趣味な人々。
 あ・り・え・な・い!

〓ガラス棒〓


追記:2006/12/15 日本語のポッドキャストで『アポカリプト』をどうぞ!
 【podcast 音声】ポッドキャスト
日本語「第11回『APOCALYPTO』」 MP3ファイル 31分
映画秘宝.com 町山智浩のアメリカ映画特電 2006/12/14
 ・もんのすごい残酷 全編血まみれ 内臓ずるずる
 ・スリル&サスペンスのシナリオはうまい
 ・差別主義的カソリック原理主義でマゾグロ大好き変態のメル・ギブソン
 ・世界中のアニメをぱくるディズニー同様、世界中の神話を自分の作品で塗り替えようとする男


... 以下つづき...【以降適宜追記】

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今日の科学メモ:アポカリプトとマヤ文明崩壊

カテゴリ[科学に佇む2006年] 2006/12/11
メル・ギブソンの新作映画『アポカリプト』、メルの前作同様(?)、一部で大顰蹙(だいひんしゅく)
 【白人来襲前のマヤ世界をマヤ語と現地民で描いた異界大作】

◆左表紙
Apocalypto [Music from the Motion Picture]
[映画のサントラ]
CD (2006/12/5)


「アポカリプト」はマヤの暮らしをゆがめすぎ
2006/12 National Geographic "Apocalypto" Tortures the Facts, Expert Says
 アポカリプト自体はいつの時代のことかは特定していないが、おそらく古典期末期の紀元900年頃がモデル。
   ※参照 マヤ文明における古典期(Classic);B.C.100(または B.C.0)-900
   ●ネット メソアメリカ建築
●農耕が非常に発達し、森林も所有・管理されていたので、主人公が密林に逃避行するのも、農作しない狩猟民が出てくるのも、ヘン。
●マヤ民の住居は広場に礎石(そせき)を置いて建てられ、果樹や家畜をともなうのが普通。
 映画のようにジャングルの中にぽつんとしてはいない。
●人間の捕獲はふつう政治抗争・いくさの際に発生していたのであって。
 映画のように生贄(いけにえ)や奴隷(どれい)目的で帝国が無垢の民を狩っていたという証拠はない。
●主人公が聞いたこともなかった「都会」を知るという設定だが、マヤ時代はやたら栄えていたのでどこの地も10〜20kmも歩けばピラミッドや街にぶちあたる。政治ネットワークもたいへん発達していたので、帝国の中枢を耳にしたことがないというのは無理。
●マヤで珍重された翡翠(ひすい/ジェード)はたいがい王族専用。
 そこらじゅうの民が翡翠でゴージャスに着飾っていたわけではない。
●生贄の首切り台が、アステカ様式。マヤではそんなものは確認されていない。
●一度に数百人もの人々が首切りイケニエされるというハデハデな設定、アステカでさえそんなことをやったかどうかわかっていないのに、ましてマヤでは…。
 マヤでの供犠(くぎ)は、公開ではなくひそやかに、いきなり殺すのではなく血抜きで徐々に死なせたものと推察されている。


〓ガラス棒〓


追記:2006/12/12
 ん。たしかに「全員マヤ人だ!」と喧伝しておきながら、主人公は北米インディアン系の役者だ、という話があったり「?」だったんだよな…。
ギブソンのアポカリプトは想像以上にひどい
 ●ネット2006/12 Gibson's new Apocalypto worse than I could have imagined Flores_Man : Messages

 ・キャスト全員マヤ人と宣伝しながら、メインの4人はちゃうんちゃう。
 ・偏見と傲慢な無神経さは「インディアンとカウボーイ」映画レベルだ。
 ・マヤ人の観客も落胆はしていたが、私ほどの憤慨は示していなかった。


 …メソアメリカの現庶民は、かつてのメソアメリカ文化についての知識と記憶を継承していないというか、過去から断絶させられているというか、西欧が記録した歴史をはんぱに教えられているていど、みたいな状態が多いとは聞き及んでいるが、… いや、上記文中の「映画を見たマヤ人」がどういうポジションの人かわからないけれど、いやしかし。ase2
 


... 以下つづき...
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日本的死:墓 葬儀 祖霊

カテゴリ[科学に佇む2006年] 2006/12/02
こちらも落ち穂拾い。

〓クール〓

◆左表紙
 「墓標の民族学・考古学」
 朽木量著
 慶応義塾大学出版会 2004/11
  [ Amazon ] [bk1]

 日本における各年代・各地域の「墓標」を調査分析したご本。
 が、その本題よりも、本論に入る前の、前段の考古学をやる上での位置、手法、流儀、心構え、べからずのおさらいみなおしが、なんでこんなところにと面食らうほど、きっちりしていてすごい。
  ・社会的な産物であるモノ自体、考古学者がそれをそれと認識できるのか
   というポストプロセス考古学派からの問題提起。
  ・いまどきの考古学者の目にかなった遺物以外は
   資料扱いされないという偏向が起きてはいないか。
p.2
 考古資料が過去の社会を正確に反映することはあり得ない。土器型式に基づく型式文化圏と、石器に基づく型式文化圏が必ずしも一致するわけではないことから見てもわかるように、特定の遺物をもって文化圏を設定し、それを直ちに現実の社会と置換するのは無意味である。型式文化圏のような考古学的に看取された遺物の時間的空間的まとまりについては、一旦、現実の社会と切り離して論じられるべきである。そして、他の歴史的・社会的コンテクストをふまえた検討を経たうえで、考古学的遺物と現実の社会との関連性を再度構築すべきである。

  ・純粋な「**文化」というものも、文化と民族の完全一対一対応も、
   現実にはありえない仮想設定。実際には混淆があたりまえと踏まえるべき。
  ・典型に囚われるあまり、典型からはずれた混淆や文化変容を
   「伝統的文化」の崩壊とみなして軽んじていた考古学者たち。
   でも実際は、その変容こそが地域文化の回復力のしるしなのであり
   なんら軽んじるべきものではない。

 ああ、このような基本的踏まえを重んじる風が行き渡っていたならば、あの忌まわしい神の手事件もなかったろうに。
    → 『日本人の起源とその反省』

●右画
・調査対象の墓標を、造立以来動かされていないと想定したり、新しくない墓を排除して、古い墓だけで過去を復元しようとするのはいかがなものか

・「墓標」を調査するのであれば、特定の形の墓だけを墓とみなすようなことはせずに、形状はどうあれ、とにかく墓らしき機能をもたされた石造物は、全て「墓標」として調査しなければ

 で、肝心の本論、墓標・墓石調査のパートでは、綿密かつ多彩な調査結果がずらり披露されているのだが、そのままでは要するに…、素人目には「これで何がわかるのか、なんのために調べているのか」が、ちょいとわかりづらい状態。

 何がわかるのか、なんのために調べているのか、それは次↓の本を読むとよくわかる。


〓クール〓

◆左表紙
 「寺・墓・先祖の民俗学」
 福田アジオ著
 大河書房 2004/10 
  [ Amazon ] [bk1]


 ・「先祖代々の墓」「**家の墓」というパターンはごく新しく、たいがいは文明開化以降。
  それ以前は、普通は墓は「家用」ではなく個人用に作られていた。

 へぇ〜!arama
 平安時代や室町時代に「**家の墓」が登場したらダウトなんだ!

 「**家」を継ぐ、そのいかにも”日本的”な習俗がいつ発生したのか、墓を見れば透け見えてくる。
p.46
 明治国家の家制度の確立と定着が大きく関係していると思われるし、それとほぼ同時期に都市を中心に急速に火葬が普及したこととも関係しているものと思われる。墓石の下に格納する部屋が設けられることで、複数の人間の火葬骨が墓石の下に入ることになり、家の自覚を強めることになった。

●右画
 火葬の普及が、「家」観念を強化した。

 まだ土葬が多かった1955年当時の調査、北陸地方には妙に火葬が多く分布していることが確認された。
 これ原因は浄土真宗だったんだそうな。
 浄土真宗が、火葬を奨励なさっていた。

 その土地、その地方で、どんな宗教・死生観が共有されていたのか、墓を見れば見えてくる。
   → 『認知考古学のお通りだ』
    縄文人の墓を見れば、縄文時代の世界観まで把握できてしまう
 墓がある場所をリストアップしていくと、墓の様式を調べていくと、こんなにたくさんいろんなことがわかってくるのか!

 さてもお墓。
 墓には何の実用性があるのか。
 ヒトはどんなことを期待して、墓を作るのか。

 死後や死者のありようは、その当時の個人の思いと共同体の想定が結晶する「共同幻想」。
 お墓は、墓を形成する価値観や文化をダイレクトに反映し、なおかつ往々にして後世にまで姿を残し、過去をかいま見る窓として機能する。

 ・東アジアでは「墓」なるものは、各所に個々点在しているものであり、
  日本のように「墓地」のごとき専用区画をもうけて埋葬する様式は珍しい。

 ・近畿地方での埋葬は村はずれの共同墓地が多く、
  東日本では家のすぐそば、「屋敷墓」が多いという差から、
  それぞれの地域で、埋葬地の観念もしくは死者のケガレ度合いが異なっていた気配。

 ・そも、墓石を立てるという風習自体、古来からのデフォルトではなかったりするし。

... 以下つづき...
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日本的死:水子 胞衣 間引き

カテゴリ[科学に佇む2006年] 2006/12/02
いろいろと、繁忙期前後に読みはしたけれど、感想を書くヒマなくやむなく保留していた既読書籍の落ち穂拾い。

〓クール〓

◆左表紙
 『水子 “中絶”をめぐる日本文化の底流』
 ウィリアム・R. ラフルーア著
 青木書店 2006/01
  [ Amazon ] [bk1]
 原書1992 Liquid Life: Abortion and Buddhism in Japan


 これはすこぶる気に入った(と表現したら失礼か)一冊、すばらしくなつかしい。 久々に。
 日本に暮らす人々がどのような観念を持って儚い命を遇していたのか。
 中絶。水子。夭折(ようせつ)。葬送。あの世。転生。

 異国の人から異国の人に向けて発せられた日本に関するその内容は、日本の読者からしても、美しく、たいへん読みやすい。

●初期仏教では、豊饒さや多産を象徴する「水」モチーフが欠落していた。これは世界的に見ても特筆すべき点。
●初期仏教においては、豊饒さや多産は善ではなく、人々を欲にかまけさせ道から遠ざける「妨げ」でしかない。

 久々に巡り会った、そう、これ、みたいな。
 ひしと抱きしめたくなるなつかしさ。
 この手の語りを見聞しなくなって久しく。 いつからだったろう。
 かつてはたしかによく接していたと思うのに。

●初期仏教は、諸処諸国への伝播と、世事にかまける在家との折り合いを経るにつれ、融通無碍(ゆうづうむげ)な「道徳的ブリコラージュ(応用アレンジ)」を広く展開する。

●日本においては、生も死もグラデーション。
 生も死も、数々の儀式を通過せねばそれとして完成されない。
 通夜、葬儀、初七日、四十九日、一周忌、十年忌… を経てはじめて死後、祖霊として完成するのと同様に、
 赤子も御七夜、初宮参り、お食い初め、初節句、初誕生、七五三… などを経てはじめて、この世の人間として成立する。
   → 『日本人が共有する死の物語』

●旧来の「豊穣・生産=水」観念は、裏を返せば「生まれきたものを返す先=水」となる。
 水に返せば、再び産まれ戻ることも可能になる。
 仏に返すのではなく、水に、返す。
 水子とは、「死を承認すると同時に、ある種の再生を信じる表現」。

※ 漢字の「流」は、赤子を水に流すさまを表した文字だったし。 → 白川静『漢字の世界』

●右画
 過去往々にして、堕胎や中絶行為を堅く禁じてきた一神教圏の西欧。
 一神教の自家中毒に陥って、西欧における中絶・堕胎(だたい)問題はひどくこじれまくっている。
 著者は、日本における中絶と水子(みずこ)の処遇、そしてその観念の機序を西欧に向けて紹介することによって、西欧的泥沼な中絶問題の、解毒を試みている。

 解毒に用いるために、なんぼか紹介内容にはさじ加減や脚色をほどこしてあるが、意外とこれ近年、過去と断絶したような奇態な死生観を振り回している現代日本のひとばらには、かえってこのような「異国人による解き明かし」のほうが、すっと受け入れやすいのではないか/思い返しやすいのではないか などと思ったりする。

 日本の文化、日本という観念の呪(しゅ)の解き明かし。 もしくは翻案の冒険。


... 以下つづき...
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魚は痛みを感じるか/動物の苦しみ

カテゴリ[科学に佇む2006年] 2006/11/29
 まだお魚シリーズはしつこく続いていたりします。osmashi

 いや、ちょっと日本語サイトを検索してみたら「魚は痛みを感じません」との旨の記述が多くてびびったんですが。

挿画●●●小玉250●●●

blamingまず3年前に海の向こうでひとしきりもめています

●右画
やさしく釣ってね 魚だって痛いんです 〜Lynne Sneddon、Dawn Carr
●NEWS2003/04 BBC News Fish do feel pain, scientists say
 魚も痛みを感じるのだという証拠を見つけたぞ。
 危害に反応する脳部位を特定したし、有害物質にさらされてもえらい反応するし。
 なんでこんなことでもめているかというと、イギリスでは動物愛護派と釣り愛好家の間で、延々確執が続いているわけで。

 「魚が痛みを感じている」主張をなさったのはLynne Sneddon。
    Lynne Sneddonの「魚の痛み研究」について記している日本語ページ
    ●ネット 魚達は痛みを感じます  〜Fishing Hurts!

 熱したり叩いたり毒にさらしてみたりしてみたところ、魚のちっぽけな脳にも鳥や哺乳類と同様にヤバイ状況を察知するための「侵害受容器(ヤバイ状況だセンサー)」がたくさん備わっていることが確認できた。
 毒液を刺された魚は患部を壁にこすりつけるなど、単純な反射行動の域を越えた「苦しみをなんとかしよう」とする動作を見せますよ。まさにこれは単なる反射行動以上の「苦痛」を感じている証拠ではありませんか。
  ※ 侵害受容器 nociceptor
    侵害刺激 nociception
    ●ネット 痛みに関する用語  〜 口腔顔面痛情報
 ちなみに軟骨魚方面では侵害受容器の存在は確認されていないので、もしかしたらこのあたりが軟骨魚類と硬骨魚類の進化的分かれ目だったりするのではないかという話も。

 で、そのLynne Sneddonの研究発表を受けて、キャッチ&リリースや残酷な漁業はもうやめて!と声高に叫ぶのは菜食主義運動の Dawn Carr。
    Dawn Carrのお魚を苦しませないで日本語ページ
    ●ネット 商業的漁業: 取材報告 魚達は、ゆっくりと死んでいます  〜Fishing Hurts!

 …しかし、なんか、Lynne Sneddonにしろ、Dawn Carrにしろ、日本語サイトでは、このものすごく下手くそな翻訳の菜食主義者サイトしかヒットしないんだが。orz

●右画
 で、Lynne Sneddonの見解は少数派であるらしい。
 大半の科学者は「魚は痛みを感じられるような脳は持っていない」とみなしてスルーしている、のかな。

「魚は痛みを感じられるような脳は持っていない」派のトップに挙がるのはアメリカ釣り同盟のブルーノ・ブロートン
   ●本ミニ 『サルでもわかる釣り入門 Fishing (Flying Start)』
    Bruno Broughton(著) Hodder Wayland (1992/9)

 魚類神経学のJames Roseも応えて
   いや、魚には痛みを「経験」できる回路がそもないし、無理でしょう。
   魚の脳は、苦痛を感じられるような意識レベルを産み出せない構造です。

●NEWS2003/04 New Scientist Fish 'capable of experiencing pain'

 Patrick Bateson氏(イギリス/ロンドン動物学会会長、著作多数あり)はなんぼか中立。
   そも、脳がどのように「似た反応」を示そうが、
   自分のものではない痛みは誰にもわからない。
   たといそれが魚どころか、ほかならぬ人間の肉親が感じている痛みであっても、
   「他人の痛みはわからない」想像するしかないのだ。
   敢えて言うならば、魚が哺乳類が苦悶の際に見せるものと似た行動を示すならば、
   「苦痛を感じている」と推察することは可能かもしれないが。

●NEWS2003/04 news@nature.com New evidence that fish feel pain
 魚は皮膚や頭部にダメージを受けたときに、回避行動を引き起こす刺激を伝える受容体(感知センサー)を備えている。
 傷を受けたら、ふつうにもがくし逃げる。
 しかし、これは魚が「苦痛」を感じているという証拠にはならない。
 WHO配下の「痛み研究国際協会」は痛みを「感覚と感情的な構成要素を伴った意識的な経験」であってはじめて苦痛といえるのだと定めている。

●NEWS痛覚はあっても痛くない?
 魚は痛みを感じられるようなレベルの意識を持ってはいないと主張した学者
2003/05 New York Times Fishing for Clarity in the Waters of Consciousness

 天体物理学者で菜食主義者のPiet Hut曰く、
   ヒトのような意識を持たなくても、
   ヒトとは異なる意識を持っている可能性は閉じられていない。

挿画●●●小玉250●●●

 そも、この「魚の苦しみ」が問題になるのは、動物愛護や動物福祉において「魚は苦しいと【思っている】のかいないのか」が肝心かなめの争点であるからであり、「魚は意識的に痛みを感じている」ことを証明できない限り、身を削(そ)がれてたまま口鰓(くちえら)があえいでいる日本のホラー名物活け作り(いけづくり)は、野放し。
 魚は痛さに突き動かされているとしても、「痛みを意識で感じている」とは認められずじまいに終わる。

●右画
 しかし、この「意識基準」。「痛み」基準。damedaroo
 ヨソの文化から見るとかなりズレてないか。
 もとより「魚は痛みを感じない」と言いだしたのは西欧人ではなかったか。

 アチラのお国はマジ「意識」第一主義。
  自由意思に執着しまくり。
 その延長なんだろう、お魚のありようまで「意識」第一でかかずらいなさる…。
 「意識」がなければ意に介さない。
 「意識の有無」が何より大問題。
 なにがなんでも「意識」第一であって「命」は二の次である、というあちらのお国の文化的偏向がよく表れているのかも。


挿画●●●小玉250●●●

 そしてLynne Sneddonの論文の翌年2004年。

 動物の心を翻訳するテンプル・グランディンさんの見解は、「魚は痛みを感じている」。
●本ミニ 『動物感覚 アニマル・マインドを読み解く』 p.244
魚には新皮質がまったくないが、たいていの神経学者は、意識するには新皮質が不可欠だと考えている。だからといって、かならずしも魚が痛みを意識していないということにはならない。種によっては、脳のことなる器官や系統が同じ機能をつかさどっていることもありうる。


... 以下つづき...
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異なる脳の世界を理解する:動物感覚

カテゴリ[科学に佇む2006年] 2006/11/28
たいへんエキサイティングな一冊。

◆左表紙
 『動物感覚 アニマル・マインドを読み解く』
 テンプル・グランディン, キャサリン・ジョンソン著
 日本放送出版協会 (2006/05)
 [ Amazon ] [bk1]

cover
 原書 2004年
Animals In Translation: Using The Mysteries Of Autism To Decode Animal Behavior
●動物という存在を翻訳する:自閉症のミステリーから解析できる動物行動
書籍情報と書評:アマゾン     .


 実にみのりの多い書。
 知の楽しさが詰まっている。
 ただでさえ、人間は人間のことさえろくにわかっていないのに、いかに我々は「異なる種の生物」のことについて無理解な状態であるかを、人間以外の生物の世界がいかに多様で広いかを、広範な分野からの研究成果をあますところなく網羅しながらこれでもかと見せつけてくれる。
 異国の人との文化慣習の違いを考える異文化研究・指南に近い、いや、前世紀後半に流行った地球外生命体とのコンタクトシミュレーションSFのリアル研究版みたいな。

 メインキャストは自閉症アスペルガー症候群女性の草分けテンプル・グランディン。
 彼女の言葉を一般出版物用に翻訳(書き下し)したのがキャサリン・ジョンソン。
 この二人についてはすでに過去にひとしきり。
  → 2006/02『テンプル・グランディン:アスペルガーのヒロイン』
    ご本人のお姿、インタビュー音声、関連サイト、著作リストなど

●●●小玉7●●●

●右画
●動物の訓練や行動操作で使われがちな「罰」。
 罰は学習に有効なのだろうか?

 動物行動を考える際に(人間の子どものしつけや教育においても同じことが言えるのかもしれないが)、罰を中心に考えるとマトハズレなことになりかねない。
 野生の世界では「罰を経験したら回避することを学びます」などと悠長なことは言っていられないことが多すぎる。
 失敗や罰を経験したときには、
   「おまえはもう死んでいる」
   とうに食い殺されてますよ
だったりするわけだから、「罰で学習」はかなり意味がなかったりするわけで。

●動物行動を考える際に「好奇心」は重要。
 エサでも好待遇でも過保護でもなく、単に好奇心が満たされること(周囲が自由に確認できること)自体が、動物にはごほうびになりうる。p.130

●●●小玉7●●●

アンカー 【動物たちのコピー文化】

●もうひとつ踏み込んで考えると、動物としては、罰やほうびを直接経験しながら試行錯誤で学ぶよりは、「誰か先輩の行いをコピーする」ほうがはるかに効率的だったりしている。
 ボノボのカンジやパンバニーシャにしても、チンパンジーのアユムにしても、直接人間から教えられるよりは、「誰か先輩の行いを自主的に見まねで習得する」ほうが手っ取り早かったり。
   ●本ミニ フランス・ドゥ・ヴァール著 『サルとすし職人』  職人の技を「見て学ぶ」霊長類

 出色なところでは、近年世界的に知名度抜群になったヨウム(オウムな鳥)のアレックス。
◆左表紙
「アレックス・スタディ オウムは人間の言葉を理解するか」
 Irene Maxine Pepperberg著
 共立出版
 2003年
 文法も概念も使いこなすオウムのすごさ!
 そしてソロモンの指輪がない状態の人間って、なさけない。

●NEWSオウムのアレックス、ゼロ概念がわかっているかも!
2005/07 EurekAlert African grey parrot is first bird to comprehend numerical concept akin to zero
2005/07 【日本語記事】ワイアードジャパン ゼロの概念を習得した「天才」オウム

●NEWSオウムのアレックスが30回目の誕生日(孵化記念日)を迎えたよTシャツ
 本物の「アレックスの羽イヤリング」も売ってるよ!
2006/08 Retrospectacle: A Neuroscience Blog African Grey Parrot Apparel for a Good Cause

 「人間がやること」を見て察して先回りして言葉を使う。
 抽象的な概念もあっさり使いこなして、教える前から質問もしてくる!
 さらには、誰も教えていないのに「単語の綴りの伝達」までいつのまにか習得してしまっているという、世界を愕然とさせたはかりしれない ミニミニ脳みそ の底力!

 教育されるより、勝手見習いのほうががぜん得意な動物たち。
 なんせ、お魚でさえ「仲間の行動をすばやく見習い学習できている」わけで。
→ 『お魚のお魚的能力あれこれ:社交的なお魚の暮らし』
   サカナがテレビでお勉強  養殖魚でも危険な捕食者の回避方法をビデオで学べるんです
   他の魚の動向から危険を学ぶ魚たち

 仲間の行動を見るほうが、自分で試行錯誤をするよりずっと手っ取り早い。
 仲間の行動をまねるほうが、自分の血の安全を守るためには効率的。p.278
p.149
 猫でさえ、人間が思っているよりはるかに社会性がある。猫の姉妹は、たがいに出産の手伝いまでする。_どの家畜にも、仲間が必要だ_。餌や水と同じくらい重要な要素なのだ。

 本来は群れて生活する馬や牛を、孤立させたり独房に入れたりするだけで、じゅうぶん彼らは精神を病んでしまう。p.143,211,216

... 以下つづき...
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海の環境、海の生態系:もしかして断末魔

カテゴリ[科学に佇む2006年] 2006/11/23
なんかね、ちょっと記事を整理していたら、ものすご どよ〜ん としてきてしまった。

挿画●●●小玉250●●●
アンカー 【アラゴナイトが溶け出す】

 海の貝、貝殻の化石は積もると石灰岩になり、石灰岩や大理石は酸性の水で溶けるのでカルスト台地や鍾乳洞ができたり…
 は、いいとして、海の貝、貝殻は、酸性の水にさらされると溶けてしまう石灰質(炭酸カルシウム、アラゴナイトなど)でできている。
●本ミニ 『海の環境100の危機』 p.92(小池勲夫)

 私たちがこのままの状態で二酸化炭素の放出を続ければ、2050年には南極海でアラゴナイトの殻を持つ生物に影響が出始めるという予測が出されたのです。 [〜中略〜] 
 海洋には炭酸カルシウムの殻を持つ生物が多く存在しますが、これには主にアラゴナイトとカルサイトと呼ばれる2つの結晶型が存在します。このうち、アラゴナイトのほうの飽和濃度がカルサイトに比べて高いため、大気中の二酸化炭素濃度の増加で海水中のpHが下がり炭酸イオン濃度が減少すると、アラゴナイトを作る生物の殻がまず溶け出すことになります。 [〜中略〜] 
 カルサイト型の殻を持つ有孔虫や円石藻などのプランクトンについても、その50-100年遅れで同様の問題に直面することになると予測されています。 

 地球温暖化をもたらしている二酸化炭素ガスは、酸性雨ももたらしてくれる。
 酸性雨は積もり積もれば、生きている貝の貝殻を溶かしてしまうほどに海の水を酸性にしていってしまいかねない。
世界の海はどんどん酸性になっている
2006/11 Discovery World's Oceans Are Becoming More Acidic

科学なポッドキャスト:Acid in the Ocean 【podcast 音声】【英語】MP3ファイル 2分
Carbon dioxide in the atmosphere is slowly changing the chemistry of the oceans.
2006/03 海が酸性化していく!
 大気中の二酸化炭素は地球を温暖化させるだけでなく、海水の化学的バランスさえをもじわじわとむしばんでいく
 この音声ファイルはウェブ上に台本が公開されています。
ネット Earthwatch Radio
 「読みながら聞く」ことができて、英語のヒアリング練習に持ってこいです。

海が腐る!? 海水の酸性化で海洋生物が死に絶えたら…
2006/02 EurekAlert Oceans may soon be more corrosive than when the dinosaurs died

2005/09 asahi.com CO2増加で海水酸性化、サンゴ溶解も 研究チーム予測
2005/09 共同通信 海の酸性化が生態系破壊 CO2放出で国際チーム予測
2005/09 【日本語記事】Nature 環境 : 海の酸性化で貝やサンゴは今世紀中に溶けてしまう?
環境:人間活動による21世紀中の海洋酸性化と石灰化生物への影響
2005/09 Nature Anthropogenic ocean acidification over the twenty-first century and its impact on calcifying organisms

海洋、酸性度増加中 二酸化炭素を減らしてくれ!
2005/06 news@nature.com Oceans in trouble as acid levels rise
 Report calls for more stringent carbon cuts to protect seas.


挿画●●●小玉250●●●
アンカー 【漁業で崩れる生態系】

 エチゼンクラゲの騒ぎも、もとは人間のしわざが、まわりまわってお帰りになってきているのであって。
魚乱獲の跡:クラゲの異常繁殖
2006/07 EurekAlert Jellyfish dominate fish in over-harvested Namibian waters

2003/10 共同通信 世界のイモ貝、絶滅の危機 薬品成分目当ての乱獲で

商業的漁業、海洋生物の遺伝的多様性を脅かしている
2002/08 EurekAlert! New threat to commercial fishing


挿画●●●小玉250●●●
アンカー 【大きい魚をとらないで!】

 人間がやりがちな「大きな魚だけをとろう」パターン。
   「小さい魚はかわいそうだ、大きな魚だけをとって食べましょう」
   「大きな魚はもうじゅうぶん生きただろう、小さい魚のこれからを大事にしてあげよう」
   「小さい魚じゃ売れないぞ、大きな魚なら高く売れる」
 これが実は、魚の保護には最悪であった可能性。suji

大きい魚をとらないで!
2006/10 National Geographic Fish Species Face "Double Jeopardy" Due to Overharvesting, Study Says
商業漁業は、魚母集団で危険な変動を引き起こす
2006/10 EurekAlert Commercial fishing causes dangerous fluctuations in fish populations
保全:漁業は漁獲種の数度の変動性を上昇させる
2006/10 Nature Fishing elevates variability in the abundance of exploited species
2006/10 【日本語記事】Nature 保全 : 漁業の魚への本当の影響

2006/02 読売 大物ばかり捕っちゃダメ…魚群の生命力低下
海洋資源の涸渇はとりかえしがつかない、その進化的理由
 大きな魚を取り尽くしてしまうと、生物の遺伝的性質までゆがめてしまうから
 小さい魚の繁殖能力はかなり低いんです
2006/01 EurekAlert 'Darwinian debt' may explain why fish stocks don't recover

 ていうかこれ、ずいぶん前から指摘されているのに現場の漁業者には伝わっていないのか無視されているのか。

捕るのは小さい魚にして大きい魚は逃がしてあげよう
 大きい魚ばかり殺していると魚の繁殖にかえって悪いから
2005/03 ScienCentral Respect for Elder Fish

海底の生態系を回復させるには、大きな年寄り魚がいないとダメなんだ
2005/01 EurekAlert Big, old fish key to restoring groundfish stocks

水産学:母親が重要なわけ 本来は若くないメスが繁殖の主力
2004/08 Nature 430, 621- 622 Fisheries science: Why mothers matter

進化生物学:タラが居なくなったら
2004/04 Nature428, 899- 900 Evolutionary biology: The cod that got away
2004/04 【日本語記事】Nature 生態 : マダラを早熟にした漁業
 乱獲がマダラの繁殖戦略を変えてしまった

大きい魚をとって小さい魚を逃がしてあげていると…
 人為淘汰で大きい魚はいなくなってしまいますよ
2002/07 EurekAlert! A fish-eye view of management through an evolutionary lens
2002/07 BBC News Fish policies 'ignore evolution'
2002/07 毎日新聞 資源保護:小型魚よりも大型魚を海に戻すほうが有効

 現場や行政が科学者の声を無視したケース。

魚についての科学者のアドバイスを再び無視した欧州
2004/12 New Scientist Europe again ignores scientists' advice on fish


追記:
魚の遺伝子プールから攻撃的なリスクテイカーがいなくなってしまう?
2008/02 National Geographic Aggressive Risk-Takers Fished Out of Fish Gene Pool?
 大きい魚ばかり獲っていると、残る血統は小さくて内気な魚ばかりになってしまうぞ


挿画●●●小玉250●●●
アンカー 【さよならマグロたち】

 大きな魚たちの減少、将来の暗さをあらわしているんだ。
2006/06 共同通信 回遊性の魚、減少が深刻 マグロやサメ、タラなど

2005/05 共同通信 数も減り、体も小さく 太平洋のマグロやカジキ

違法なマグロ漁と養殖が招く、種の終焉
2004/11 World Wildlife Fund Illegal tuna fishing and farming leads to demise of species

マグロ、マカジキ、メカジキ、サメ、タラ、オヒョウ…  大きいサカナはみんな絶滅してしまうかも
2003/05 BBC News Large fish 'may follow dinosaurs'
2003/05 共同通信 世界の魚50年で10分の1 予想超える乱獲の影響
2003/05 EurekAlert Only 10% of all large fish are left in global ocean
捕食性魚類群集の急速な世界的減少
2003/05 Nature 423, 280 - 283  Rapid worldwide depletion of predatory fish communities


挿画●●●小玉250●●●
アンカー 【北海】

 フィッシュ&チップスのイギリス。
 北海の異変に戦々恐々。
北海がやせ衰えていく
2004/09 BBC News Picture of North Sea fish decline

北海がヤバイ プランクトン層まで変わってきている
2004/07 BBC News Climate warning from the deep

2003/10 【日本語記事】ネイチャーバイオニュース 北海には小ぶりの魚が多くなった  原因は大型魚の乱獲か、それとも...
 体長が約30センチより小さな魚の個体数が増加した
 魚類の生態系が特定の方向に変化してしまうと、元の状態に戻すことが極めて難しくなるかも

 北のほうの海は、熱帯の海に比べて棲息している生物の種類はすごく少ない。
 ●本ミニ 『魚の心をさぐる』 p.31 -32

 しばらくそこで潜っていて気づいたことは,スコットランドの海で見られる魚はせいぜい10種類くらいしかいないということだ。したがって,みんな学名まで憶えてしまう。4,000種類もの魚がいる日本沿岸で魚の研究者をやっていくのは,名前を憶えるだけでも大変だ。

 日本の海からは想像もできないほど、シンプルな生態系。
 そんな少ない種類の中で観察される生態系の変化、かなりヤバイ。

 生態系に不適切な漁はかねてより。
イギリスでは9世紀からすでに乱獲は始まっていた
2004/11 New Scientist Intensive fishing was an ancient practice

人類による生態系破壊ははるか昔から始まっていた
 数千年前の漁猟や狩猟ですでに乱獲&絶滅 影響は今に至る
2001/07 BBC News Human plunder of the seas
2001/07 EurekAlert! Scientists examine the seas our ancestors fished to better understand today's changing oceans
2001/07 EurekAlert! Cover story in Science reveals historical overkill of marine  Megafauna triggered current ocean crises
2001/07 EurekAlert! Scientists: Collapse of coastal ecosystems tied to past overfishing
2001/07 cnn.co.jp 先史時代の魚の獲りすぎが今も生態系に影響 米など研究


挿画●●●小玉250●●●
アンカー 【トロール漁獲:限度を知らない私たち】

 海の実態を把握できているとはとうてい言い難い知識レベルなのに、ばしばし水産資源を海からいただいてしまっているというのは、なんというか、いや、うまいたとえさえ …思いつかなくなってしまった。
水産学:深海に生息する魚類は絶滅の危機に瀕している
2006/01 Nature Fisheries: Deep-sea fishes qualify as endangered
2006/01 読売 深海魚が絶滅の危機、トロール漁の影響で
2006/01 BBC News 'Critical danger' warning on fish トロール前・トロール後の写真あり
2006/01 New Scientist Deep-sea fish species decimated in a generation

2004/10 【日本語記事】ワイアードジャパン 「深海トロール漁業は生態系への脅威」保護団体が運動開始

北大西洋の魚濫獲、魚のたくわえにひどく損害を与えている
2004/07 BBC News Deep sea fish stocks 'in crisis'
 Over-fishing in the north Atlantic is seriously damaging fish stocks

増えすぎた人口、海は乱獲に耐えられない
2003/10 BBC News Overfishing threat grows

海山でのトロール漁、影響がはかりしれない
 過去、わずか5つの海山から発見された新種の生物は600種にものぼる
 ほかの海山にもいる深海生物、発見・研究される前に死に絶えて行くぞ
2003/08 New Scientist Trawling seamounts threatens ocean's biodiversity


... 以下つづき...
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ブレインダメーぢ:失語症の世界

カテゴリ[科学に佇む2006年] 2006/11/22
この本は好き。グッジョブ。

◆左表紙

 『失語症のすべてがわかる本』
 健康ライブラリーイラスト版
 加藤正弘 (監修), 小嶋知幸 (著)
 講談社 (2006/07/11)
 [ Amazon ] [bk1]


 テキカク。
 わかりやすい。
 絵がたいへんストレートで適切。
 必要十分。

 失語症患者さんに接する可能性がある人すべてにひととおり配って、この症状がなんであるかを理解してもらう、その理解してもらうツールに最適な感じ。

 失語症の状態は、あらかじめ知識がない人にはたいへんわかりづらい。
 「自分」という機能がどのように成り立っているのか、医学的に把握できている人なんか、世の中そうそうはいない。
 見た目は正常なので、実態も困りどころもなかなか理解してもらいづらい。
 意志疎通がかなりしんどいので、いろいろなことができるのに、何もできないだろうと片づけられてしまいがち。

 そんなこんなの、いろいろな「理解しておくべきこと」「理解するとラクになること」がややこしくなくスパッと説いてある。

 まず一般の人がどのくらい失語症というものを理解していないか、どのくらい誤解していうるかを見せつける。
 ツカミは簡単なクイズ。
  1・ぺらぺらしゃべっている人
  2・人の言うとおりに動作できる人
  3・漢字を書いている人
  4・キーボードで文章が打てる人
 この中のどれが、失語症には ありえない 状態なのか。

 正解は4のみ。
 1,2,3は、いずれも失語症である可能性がある。
 さて、どうしてだ!?

... 以下つづき...
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科学と宗教、東西生死の進化心理学と世界観

カテゴリ[科学に佇む2006年] 2006/11/21
 前段エントリの → 『脳の中の倫理:知的会話のための英語に見る自文化中心主義』 を受けながら以下。

 下記の表をよく見てほしい。

【画像が表示されない場合は】


 意味わかります?

 いやね、先月10月25日の暫定エントリで触れた海外サイトの 象限(しょうげん) 表、それ日本語に描き換えたものなんですが。
●ネット科学と信仰、あなたのポジションはクイズ:Worldview Quiz
 がんばって回答すると、「有名人のポジションはこれ」が拝見できます。
 カール・セーガンは右上、ブッシュはチョー左下。
 でもって、自分はごっつ左上だった。
 これ西欧人向けの設問なんだが、日本人が回答した場合、平均はどこらへんになるんだろう?
                    〜10月25日エントリ


 これはたいへん示唆に富む図表というか、客観的に自分がどこにいるか、それはなぜなのか、省みるのに大変便利。めうろこ。少なくとも自分には
 元の表では左上は空白だった。誰もいなかった。
 表の中で左上に入ったのは私だけ。
 ほかの日本人は? どこに入る?
  Worldview Quizの設問(英語)に答えると、自分がどの位置に入るのか結果が図上に表示される
  誰か日本語バージョンを組まないか?


 左上にいるのは私だけなのか?

〓ガラス棒〓

◆左表紙
●右上。
 科学信者で、かつ人類繁栄してあたりまえ系信者。
 高度成長期日本のブイブイ好景気&万博的バラ色未来の洗礼を受けた世代には、
   人類は宇宙へ進出して無限にスタートレック繁栄して
という感覚デフォルトが多いのかもしれない。
 彼らは当然右上に位置するのだろう。 故カール・セーガンに違和感を感じずに。


 士郎正宗が描く世界観も、救済観に微妙にキリスト教的な物をかぶってしまっているが、基本的には科学技術礼賛であり、自己の永遠の存続を理想とする右上さんだと思われ。

◆90表紙
●左下。
 「非科学的&人類には終わりがある」派。
 信仰どっぷり+いわゆる 終末観
 世界を席巻しまくっているブッシュとオサマ・ビン・ラディンが、みごとに超左下。
 あからさまに同類なんだもんなぁ。
 ブッシュ的には、戦争に命を捧(ささ)げることによって神の国に入る資格をゲットできます/神の国に入る資格を得るために命を賭けろ。
 それこそオサマ・ビン・ラディンと同類。


... 以下つづき...
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脳の中の倫理:知的会話のための英語に見る自文化中心主義

カテゴリ[科学に佇む2006年] 2006/11/21
◆左表紙

 『脳のなかの倫理 脳倫理学序説』
 マイケル S.ガザニガ (著)
 紀伊國屋書店 (2006/02)
 [ Amazon ] [bk1]

原書情報と書評: The Ethical Brain Michael S. Gazzaniga (著)(2005/05/20)


 脳研究の最新局面など、いろいろ知らなかったことを知りたい人にはおすすめのご本。
 わかりやすく、興味深く、世界中の科学者がいそしんでいる人体最先端の脳研究成果、2005年時点の新しい知見を、ふんだんに知ることができるでしょう。

 いやぁ、脳研究の最新局面などもうじゅうぶんだよ、その先はどうなっているんだい、もっとメタな話はどうなのかな、「倫理」が脳とどう切り結んでくるのか見せてくれよ、というお方には、もしかしたら残念なご本かもしれない。

 残念なご本。
 ふつうに読むぶんにはたいへん示唆に富む良いご本なのでしょう。
 でも結局、「科学的にニュートラルな観点から倫理を考えて」いるつもりで講釈なさっているのに、西洋的、もしくはあちらローカルな規範に偏った、ニュートラルとは言えない思考をなさっていることを認識なさっていない。
 文化を踏まえた見解が欠けている。
 結局、自文化中心主義(自分とこの文化中心主義)にとどまったまま、比較・相対視点に入(はい)れていない。

 西欧には「命」という概念はないのかな。
 「人格」とは別に存在する「命」。
   人格は、尊い命に乗っている
   ヒトは、尊い命を与えられている
   尊い命のおまけとして、人格が乗っている
という感覚は、キリスト教文化圏では理解されないのかもしれない。
 自然(じねん)から与えられた尊い命を、たまさか管理するよう申しつけられた/めぐりあわせた、命の下僕としての、我々人格。命を有効に永らえさせるよう、そこに乗せられた我々個々の人格は生涯精進せねばならない。
 一昔前に有効だった死生観の一つ。
 この、人格とは別に存在した命の尊さは、科学と進歩の皮をかぶった現代的世界観とゲームシステムがもたらす世界観によって深刻なダメージをこうむっている。
  → 『死の変貌 デスについてのノート』

 人格よりも、「命」を大切に。
 これ、西欧にあります?
 この感覚は日本ではいつ発生したんだ? いまは薄れているとしても、かつてはあったぞ、慥か。

 「命を大事に」と「人格」に対して説く、その「命と魂は別だよ」感覚に直接つながるらしき、複数霊魂観というものは、西欧はともかく、アジアには古来より。


アンカー 【魂魄:こんぱく】
 魂魄:こんぱく
  飛び去る魂:こんと、肉に残ってゾンビ化なんかもしちゃう魄:はく

 中国の道教由来の「陰陽」霊魂観。
 人間の霊魂は三つの「魂:こん」と七つの「魄:はく」から成っているとされる
 (民間信仰では魂と魄それぞれ一つずつになっていたりする)
●本ミニ ジョセフ・A.アドラー著 『中国の宗教』 春秋社 (2005/06) p.173大意
 
 中国の伝統的な死生観では、故人の霊は精神的な魂と肉体的な魄に分解し、魂は天に帰り、魄は土にかえるとされる。
 〜西谷大「第9章 墓と貨幣 古代中国の死後の世界」p.230大意
●本ミニ 『講座人間と環境9 死後の環境 他界への準備と墓』 昭和堂 1999

 魂=陽 精神 身体からはなれる動く霊魂
 魄=陰 形骸 身体にとどまる動かない霊魂
 古代の日本人も、中国人とまったく同様に、動く霊魂と動かない霊魂という観念をもっていた。
●本ミニ  諏訪春雄著『日本王権神話と中国南方神話』 角川書店 (2005/07) p.157-158大意


 (霊魂とは、生死において発生する感情的なわだかまりを処理するために設定された便宜的な緩衝用概念、というみなし方ができる)

 キリスト教的(ブッシュ的)世界観においては、上の「人格に対して命を大事にと説く」どころか、人格がメインで命は二の次ではなかったか。
 死後の冥福は祈らない。少なくとも日本的な意味では。
 死後は神の管轄。
 神が、土くれにヒト人格を吹き込みお試しなっているのであって、死後、生前の行いを元に神が人格をお裁きになられる。ヒト人格が目指すのは、一回きり許された今生において、全霊を賭けて神の国に入る資格をゲットすること。
 命ではなく、人格メイン。
 「ヒト個々人の自由意思」に対する、盲信とも言うべき強固な執着。

... 以下つづき...
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